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会員紹介

株式会社HAT 全国大会での発表より

「集中と選択」「人との信頼関係」「デジタル社会の基盤」

【PICC全国大会2024 REPORT】

※  本記事は、2024年10月に行われたPICC全国大会での発表に基づいて作成されたものです。

 

 PICCは2024年で設立10年を迎えました。10年の節目を機に全国の組織を変更し、会員制度の見直しも行っています。新生PICCとして会員が団結し、同じ方向に向かって行くことができるよう、全国から会員が集い、PICCの在り方について再確認できる場として、10月16日に「PICC全国大会 in 福岡」を開催しました。  

  

 今回は「PICC全国大会 in 福岡」で登壇し、実践事例を報告してくれた会員企業を紹介します。ICTサービスを展開する株式会社HAT代表取締役・南 壽郎さんです。2016年にPICCに入会したことが「事業回復につながった」と語る南さんが、PICCでの学びを通じてどのように社会貢献につながる取り組みを広めていらっしゃるか。

 

 業種や業態は違えども、大切にすべきポイントには多くの会社で通ずるものがあると思います。ぜひ全国大会に参加できなかった皆様にとって参考になれば幸いです。
 

「集中と選択」「人との信頼関係」「デジタル社会の基盤」

代表取締役 南壽郎さん【画像提供:HAT】

会社概要

株式会社HAT

代表取締役 南 壽郎

 

株式会社HATは、データ移行、Web・ECサイト制作、プロフェッショナル支援、サーバーホスティングといったサービスを提供しています。企業の事業戦略に応じたWebサイトやプロモーションの企画を提案し、特に通販事業者に向けて課題解決を支援。それによって成功体験を実現させています。また、高可用性と高セキュリティのレンタルサーバーも提供しており、国内データセンターと契約することで安全な運用環境を整備するスタイルも取っています。

https://www.hat.ne.jp/

株式会社HAT 南壽郎 社長 活動報告より

 私は1996年に新卒でソフトウェアメーカーに就職し、2003年に起業を決意しました。当時はインターネットがすごく流行っており、VISIT JAPANで訪日外国人のツアーが人気を集めていた時代でとなります。

株式会社HAT 南壽郎 社長 活動報告より

全国大会で事例発表を行う南社長

 現在は、使いやすい訪日外国人ツアーのシステムがあると思うのですが、当時は空室状況を簡単に確認できるシステムはあまりありませんでした。そんな中、弊社のシステムは集客状況が一目でわかる行程表やDMリストが強みでした。当時はまだ団体旅行が主流でしたので、国内150社のホテル・バス・立ち寄り施設、オペレータ会社と海外30社の旅行社とのマッチングサービスを提供しました。
 

 目標を立て、意気揚々とスタートし、途中までは非常に順調でした。しかし、ここで問題が発生します。例えば海外旅行会社・オペレータ会社の債権回収が難航したり、想定外の使用により、システム・サーバーへの膨大な負荷がかかったり……。我々のビジネスは、もう破綻の状態にありました。そこで運転資金が底をつき、方針を転換。国内でシステム開発でも、ホームページ制作でも何でもやります、というスタンスにしたのです。

 今思い返せば、PICCのあり方・やり方を考えれば、この方針転換は成功だったと思っています。これによってホームページ制作、レンタルサーバー、あとは保守サポートも、一生懸命に請け負うことになります。当時は10名弱で運営していましたが、月々の売り上げが500万円ぐらいになりました。初年度は赤字でしたが、次年度は1300万円、3年目は2000万円、4年で4800万円と徐々に増えていき、その後はアベレージで7000万円くらいの売上規模で推移していきました。

 売上は安定してきたものの、私自身が家族や社員、取引先に対して不満を抱いていた時期になります。「なんでもやる」という方針だったこともあり、社員と私との間で意識の乖離が生まれていたのです。「このままではいけない」「何とかしなければならない」と思っていたとき、私の焦りを見ていた友人社長がPICCの勉強会(あり方塾)に誘ってくれたのです。「経営者勉強会があるから参加してみようよ」と。
 

 疑心暗鬼ではありましたが、「少しでも現状を変えたい」という思いで、その勉強会に参加してみることにしました。計6回、経営者としてのあり方、原理・原則として「会社を存続させること」「雇用を守ること」「社員に夢を見させること」を学ばせていただきました。
 また、福岡ではあり方を卒業した人を対象にやり方塾も用意されていたので、こちらも1年間受講しました。「真のニーズの為の次の1手」という課題は、3回提出してダメで、4回目でようやく合格をいただくことできました。
 

 PICCでの学びは私にとって大きな転機でした。当時、何でも請け負っていたいろいろな事業について、「育てる」「攻める」「捨てる」「守る」というセグメンテーションをしたところ、数あるうちの事業から「南さん、これがいいと思うよ」と、データ移設代行への選択と集中をした方がいいとアドバイスされたのです。なぜなら、いろいろなところから相談されるものの、面倒で誰もやりたがらない事業だったからです。本当は、自社サービスを「攻める」事業にしたかったのですが、データ移設代行を「攻める」事業に変えました。これが私の「出会いと決断」です。

やり方塾で課題発表をする南社長【画像提供:HAT】

 データ移設代行サービスは、企業がシステムを変える際に、個人情報や注文情報、クレジットカード情報などの重要なデータを安全に移行する仕事です。現在は、通販のショッピングカートを扱う大半が弊社のサービスを利用してくれるようになりました。「HAT」という名前は、「Web系の会社」という認識から「データ移設の会社」だと言われるように変わってきています。
 

 事業も安定し、順調に成長しています。14期目までの売上は7000万円程度が続いていましたが、やり方塾を卒業した15期目には1億円を突破し、19期目には一気に9億円にまで成長したのです。社員が頑張ってくれたおかげであると感謝しています。

 ただ、20期目のところでは少し下がったような状態になっています。ありがたいことにお仕事のお誘いが多くなった結果、業務が逼迫して社内環境が劣悪になり、クオリティが維持できなくなっていたためです。また、社員のケアが行き届かいていないことも大きな課題です。社員が退職する事態も発生していました。

 あとは本当に反省するところとして、別事業に手を出してしまったことが挙げられます。コーヒーを売らないか、という話をもらって、視察のためにコロンビアまで行ったのです。結果的には全く売れず、途中で頓挫してしまいました。この間、社員は黙々とデータ移設をしてくれていたのです。私がいれば、社員をケアすることができたのにと、本当に申し訳なく思っています。

HATの本業である「データ移設サービス」【画像提供:HAT】

 総括にはなりますが、今までの経験から「本業にこそ魂を燃やす」ところが大事だと考えています。「業界No.1を目指す」。今でこそ、シェアはNo.1をいただいておりますが、まだまだ伸びしろはあると思っています。ここを深堀りしたいと思います。

 加えて、何よりも「社員の声を聞く」ということ。「目の前の人に誠実を尽くす」。そして、結局のところ「A・B・C」、当たり前のことをビシッとちゃんとやるということが、最も重要ではないかと考えます。

   

 

※  本記事は、2024年10月に行われたPICC全国大会での発表に基づいて作成されたものです。

取材協力:

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