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会員紹介

株式会社Campanula 全国大会での発表より

「若手育成」「リーダーシップ」「コミュニケーション」

【PICC全国大会2024 REPORT】

※  本記事は、2024年10月に行われたPICC全国大会での発表に基づいて作成されたものです。

 

 PICCは2024年で設立10年を迎えました。10年の節目を機に全国の組織を変更し、会員制度の見直しも行っています。新生PICCとして会員が団結し、同じ方向に向かって行くことができるよう、全国から会員が集い、PICCの在り方について再確認できる場として、10月16日に「PICC全国大会 in 福岡」を開催しました。  

  

 今回は「PICC全国大会 in 福岡」で登壇し、活動事例を報告してくれた会員企業を紹介します。人材教育サービスを中心に展開する株式会社Campanula代表取締役・権堂千栄実さんです。権堂さんはPICC福岡グループ教育支援委員長を務めており、今回は全国横断で行っている若手社員向け合同勉強会、No.2育成研修会の実施報告をしてくれました。

 

 社員教育は、社員が一人でもいればどの会社でも重要な課題のはずです。報告いただいているポイントには多くの会社で生かせる情報があると思います。ぜひ全国大会に参加できなかった皆様にとって参考になれば幸いです。
 

「若手育成」「リーダーシップ」「コミュニケーション」

代表取締役 権堂 千栄実さん【画像提供:Campanula】

会社概要

株式会社Campanula

代表取締役 権堂 千栄実

 

 株式会社Campanulaは、福岡市に本社を構える会社で、企業の人材育成と定着を目的とした教育コンサルティング事業を展開。「次世代の担い手育成」をMissionに、社員の経験(キャリア)を培う、育成プログラム(OJTプラン)開発、組織体制の見直し、教育環境の整備に関するコンサルティング行う。

 お客様の社員とともにプロジェクトを立ち上げ、仕事の内容をヒアリング、仕事の流れと覚える順番の整備、仕事の覚え方などをベースに情報整理。プロジェクトに参加した社員に対しマネジメントスキル、指導力の向上など育成支援も行う。ご要望があれば、短日研修の講師も行う。
 また、社会貢献活動として、「地域の次世代」となる子どもたちと、地域企業を教育でつなぐ職業体験活動にも取り組む。
 
仕事の可視化コンサルタント  – 経営者の思考の整理お手伝いします
 

株式会社Campanula 権堂千栄実 社長 活動報告より

 今回は、私が担当した「若手社員向け合同勉強会」と飯田理事が担当した「ナンバー2育成研修会」の実施報告をします。

 PICCの教育支援委員会では、自社の社会的役割、いわゆる公益教育を旗印に中学校や高校を中心に出前授業を実施しています。そんな中、福岡グループでは「社員と共に活動する」というテーマを掲げ、2017年から活動を開始しました。中学校での職業体験から始まり、高校生の職業人インタビューなどのキャリア教育を行い、PICC会員である多くの経営者様、社員様、U25会員である大学生の方々など、広い層の方にご参加頂きました。

株式会社Campanula 権堂千栄実 社長 活動報告より

全国大会で事例発表を行う権堂社長

 2018年からは、当時の福岡大学の学生(U25)を対象に、「もっとビジネスの中に踏み込んだ研修をしてもらいたい」という話を受け、ビジネススキル向上を目的としたリーダー研修やスキルアップ研修を開催しました。飯田理事が講師を務めるリーダー研修会に波及し、権堂はビジネススキルアップを目指す研修会に波及しました。

 この活動が全国規模に普及した結果、2024年度から開催の「若手社員向け研修」「ナンバー2育成研修会」に発展します。

 
 「若手社員向け研修」の講師は権堂が担当しています。参加者は、入社間もない社員や年齢が若い方々で、外国人社員8名も加わり、2024年6月から隔月で権堂が講師を務め、オンラインで勉強会を実施しています。

 
 「ナンバー2育成研修会」の講師は飯田理事が担当しています。参加者は主に企業のナンバー2となられる方、14社28名が参加しています。講師以外に、PICC福岡事務局の安藤さん、PICC本部事務局の田村さんにもご協力いただき、3カ月に1回開催しています。
 「ナンバー2育成研修会」は、会社の未来を担う次世代のリーダーを育成することを目的としています。ただし、PICC会員企業の大半は、今すぐに事業承継を考えているわけではありません。

 
 現状、No.2というものは

 ①社長の考えを先回りして伝え、会社の方向性を揃える
 ②社員と意思疎通をはかり、それを社長に共有する潤滑油となるNo.2を育成する

 という考えをもとに研修を行っています。講師の飯田理事は元航空自衛隊というご経験を生かし、リーダーシップの基本やコミュニケーションの重要性について講義を行います。
 

 「若手社員向け研修」は参加者自身が興味のあるテーマを挙げ、講義やワークに反映させ、課題を主体的に捉え取り組むことを重視しています。自分自身の目標や課題を自ら考え、決めて行動する、というプロセスを通じ自分事として捉え、自ら成長を目指す姿勢を養うことを目的にしています。

 
 現在の企業では「指示待ちの姿勢」や「新しいことに挑戦したがらない」という共通課題もあり、その改善として主体性を育むため、毎回オンラインですがグループワークを多数行いました。
 他社の方、特に外国籍の社員の方と意見を交わす機会を設け、視野を広げるとともに、新しいことに挑戦する機会を与えています。すでに3回の研修を実施しました。

 初回は発言ができず、オンライン研修でのグループワークに戸惑う方が大方のですが、回を重ねるごとに発表に慣れ、新たらしい課題に挑戦することへの抵抗感も少なくなり、前向きに取り組む姿が見られました。

 グループワークは「対話力」を強化します。若手社員の中には、他人と話すことが苦手な方も少なくありません。グループでの話し合いを通して、相手の話を聞き、考えを言葉にして伝える「対話力」を身につけます。「対話力」の向上は社員数が少なく、教育の専任担当がいない中小企業では時間がかかりますが、複数企業が集まる合同勉強会であれば短期的にスキルアップを図ることができます。
 

 しかし、若手社員だけがスキルアップが図れても経営者や上司が受け入れなければ、効果は持続できません。
 研修内容は毎回研修のまとめとして研修日報と宿題を出します。この研修日報と宿題を通して、経営者や上司の方と企業内コミュニケーションが行われるようにしています。
 研修したことを社内でも反すうすることができれば、スキルの維持が可能になります。

 
 権堂が行う研修は「発生的認識論」という学習理論を用いて構成しています。

発表の中で使われた「発生的認識論」の説明資料【画像提供:Campanula】

 この学習理論は、「人が1人で何か出来るようになるには、4つの成長段階がある」とい考えです。例えば第1段階は大学を卒業された方が企業に入社し、会社の日常的なルーティン作業、仕事の流れ、段取りなどを教えてもらうことだとします。

 しかしこのようなことは1~2回聞いても理解できることではありません。
 1週間、あるいは1カ月ほど時間がたってから、ようやく「この仕事の前にはこれをするんだったかな…?」「この仕事の流れはこれで良いのかな…」という「うろ覚え」の段階に入ります。

 例えば入社時から「会社に入ったら手を洗いユニフォームに着替える」と教わってきたとします。ある程度覚え「うろ覚え」の段階に来ていた時に、違う方から「順番が逆。ユニフォームに着替えてから手を洗う」と言われたら、覚えてきたことが間違いだと思い、第1段階から覚えなおそうとなり、これまで覚えてきたことをゼロに戻してしまうのです。

 このように、ゼロベースで教わったことに、少しでも違う情報が入ると、また1から覚え直すことになり、結果として仕事を覚えるのに必要以上に時間が掛ることになります。
 したがって、育成時間を短時間で効果的に行うのであれば、できるだけ同じ人が端的に物事を教えていくか、動画などを使い教えることに矛盾が生じない環境を整える必要があります。
 社員を効果的に育成するのであれば、社員自身の自己努力だけなく、企業側の社員を育てる環境整備や育成体制の整備も重要な要素です。

 研修に参加される若手社員は、学んだことを活かし、彼らなりに会社の為に役に立ちたいと考えます。例えば、若手社員が研修で学んだことを活かし、自分なりに考えたことを上司に提案した際、上司がその提案を受け入れ、実現の場を与えることができれば、彼らのモチベーションは高まります。会社が社員の主体性を発揮できる環境を整え、「やってみよう」と背中を押せる風土があれば、人材の定着に効果があるのです。


 これは「モチベーション理論」で説明されています。
 

 モチベーション理論(職務特性モデル)とは、「仕事の特性が心の満足度を与えてやりがいに繋がる」という理論です。仕事を通して、自分は誰かの役に立っている、誰かに「ありがとう」と感謝されている、必要とされていることを実感できると、心が満たされ仕事に対して意欲が出たりやりがいを感じるという考え方です。

 仕事を通して体感する要素は5つの特性(①スキルの多様性、②タスクの一貫性、③タスクの重要性、④自律性、⑤フィードバック)に分解できますが、中でも「⑤フィードバック」が重要です。
 例えば「フィードバック」を「ダメ出し」と捉え、単に悪いところを指摘すると、社員の意欲が低下します。そうではなく、「フィードバック」は、「ここが良かった」「こうすればさらに良くなる」という次のアクションにつながる情報を含め、改善情報も伝えることが大切です。社員のモチベーションは、社員本人だけでは高まりません。社員が少しでも意欲を見せた場合、上司がその提案のどこに賛同し、どこを改善したらよいかを明確に伝え、後押しする姿勢を示してください。人材の定着に悩まれている企業様は、是非モチベーション理論をご参考の上、仕事の割り当てをご検討下さい。

発表の中で使われた「仕事の覚え方の違い」の説明資料【画像提供:Campanula】

 最後にお伝えしたいことは、仕事の経験の積み重ね方が、若手社員と指導者とで違いが生じていることです。到達点は「仕事を覚えること」で同じなのですが、そこに行くまでのプロセスに違いがあります。指導者は「積み上げ型」、知らないことでもまずは取り組み、経験する。その積み重ねで未知のことでも果敢に取り組みます。一方、若手社員は「逆算型」、到達イメージを確認してから、経験を後付けさせます。よってイメージが湧かない、未知の仕事には挑戦しないが、状況が分かれば取り掛かれます。このように、仕事の経験の積み重ね方に違いがあることが分かれば、指導の仕方にも工夫ができます。
 

 若手社員向け勉強会やナンバーNo.2育成研修会では、1社では中々取り組めないような社員研修でも、会員企業が集り社員同士が交流することで自己成長を感じ、次の目標に向かい主体的に取り組む意欲向上を目指して取り組んでいます。
 

 社員の持つやる気やスキルを最大限に引き出し、職場全体のパフォーマンス向上に貢献できるよう、これからも研修の内容を改善していきます。まだ研修会にご参加でない企業の皆様も是非PICCの研修会へ参加をご検討下さい。

 今回の報告を通じて、社員教育の重要性や、組織全体の成長を目指す方針が皆様に伝われば幸いです。

    

  

※  本記事は、2024年10月に行われたPICC全国大会での発表に基づいて作成されたものです。

取材協力:

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