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【PICC会員企業紹介】
※ 本記事は、2022年1月に掲載されたものであり、掲載当時の情報となります。
NPO法人日本ビューティ・コーディネータ―協会 副理事長を務める有限会社エイジ代表取締役の三戸栄さんは、「お役に立つ・美の創造・社会的地位の向上」を基本理念とし、広島で6店舗のヘアサロン「PROSOL」を運営する。店舗内にはエステサロン・ネイルサロン・ウエディングサロンなどを併設し、お客様それぞれに合った「美」を最大限に引き出すトータルビューティ事業を展開している。
同社の特徴は働きやすさにある。高い離職率が問題となることが多い美容業界において、女性従業員が約8割を占める同社では、結婚や子育てといったライフステージの変化に合わせた柔軟な働き方ができる環境整備に注力してきた。2018年には「広島県働き方改革実践企業」に認定されている。社員を大切にする姿勢は教育体制にも現れている。専門スキルの向上だけでなく経営についても学ぶ機会が豊富であることから、個々の人材の能力水準も極めて高い。
「経営において物事を考えるあらゆる基準を大久保秀夫塾で学んだ」と話す三戸さんに、事業における理念・ビジョンの大切さ、そしてPICCで得たことについて伺った。
有限会社エイジ
代表取締役社長 三戸栄(みと・さかえ)
所在地:〒731-0137 広島県広島市安佐南区山本1-8-15-101
TEL:082-832-5265(OFFICE)
http://www.prosol.co.jp/
弊社の基本理念は、「お役に立つ・美の創造・社会的地位の向上」です。
27年前にジム・コリンズの『ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則 』を読み込み、3日間ほど考えて作ったものが基本となっています。その後、大久保秀夫塾での学びを受けて、現在の理念が生まれました。
理念を作った当初は言葉として飾っている状態でしたが、10年目を過ぎた頃から意味を持ち始め、現在はあらゆる意思決定の指針となるくらい中心的な存在です。
理念の一つである「お役に立つ」とは言葉通り、困りごとを解決することです。どの企業の理念であっても不思議でないほど、あまりに基本的なことだと思われるかもしれません。しかし、仕事を通して自分の人生を幸せにしようと考えるならば、誰かの役に立つという人間としての根幹を徹底することが不可欠だと思い、あえて理念として掲げています。
「美の創造」とは「いつまでも健康で美しく」という誰もが願う究極の願望を実現することです。キレイなもの・かわいいもの・かっこいいもの、これを日常的に創り続けることでお客様の生活を楽しくするお手伝いをするという意味が込められています。
「社会的地位の向上」に関して、僕が就職した頃は「美容師」というと、やんちゃな人が就く職業というイメージがありました。特に男性の場合、仕事を聞かれたときに美容師と答えることに若干恥ずかしさを覚える時代だったのです。今でも新入社員研修のときに、「彼氏が美容師だった場合、親に紹介するときに堂々と職業を言えますか?」と聞いているのですが、最近の子たちは「大丈夫です」と答えてくれます。昔とはだいぶ変わってきていて、嬉しい限りです。それでも、例えば銀行員や商社マンと比較すると現代社会であってもどこかで差を感じてしまう美容師がいるかもしれません。本当は非常に価値のある職業です。胸を張って自分の仕事について話せて、対外的にもきちんとした職業だと認めてもらえるようにしたいと思って、社会的地位の向上を理念に入れました。
大久保秀夫塾の第1期生として、大久保塾長が直々に行う勉強会に参加させていただいたことが僕の経営のターニングポイントになりました。塾長からは目頭が熱くなるような話を毎回聞かせていただきました。
もう7回も聞いているのに、いまだに涙が出そうになる話があります。
「ある日、おばあちゃんが大切にしていた時計が止まってしまいました。電池が切れているので電気屋に電話をすると、その電気屋さんは乾電池一本のために、自宅まで訪問し、おばあちゃんに代わって電池を交換してあげました。もちろん赤字です。この話が人づてに伝わり、その地域では洗濯機やテレビなどの家電が壊れると、皆その電気屋に頼むようになりました」
この「お年寄りのために電池一本を赤字でも届ける電気屋」の話を通して、大久保塾長は「社会性」、すなわち「社会をよりよくしたい」という使命感の重要性を教えてくれました。お客様と向き合って、どのように社会貢献するかを考えることが商売であり、経営者は全ての原点に「社会をよりよくしたい」という使命感がなくてはなりません。
まずは社会性があり、社会性を実現するためのビジネスモデルに独自性があり、最終的に継続できる経済性を確保する。この「社会性・独自性・経済性」という順番が大切なのだと何度も繰り返し教えられました。
大久保塾長や、PICCのメンバーと出会った2011年から、経営の本質が少しずつ見えてきたように思います。大久保秀夫塾での学びが経営者として物事を考えるうえでの基準となっています。本当に素晴らしい経験をさせていただき、大久保塾長とPICCには心から感謝しています。
公益資本主義を学んで変わったことは山ほどあります。
会社で新しくキャンペーンや企画を考えるときには、「社会性・独自性・経済性」という順番で組み立てるようになりました。「この企画を行えばお客様に喜んでいただけるのではないか?」「綺麗で元気になっていただけるのではないか?」という思考からスタートし、最終的に「ではいくらで実施しましょう?」とお金の話になっていくのです。
この思考に切り替えてから、業績は右肩上がりです。僕が大久保秀夫塾に参加したのは49歳のとき。ちょうど美容師としてはさみを置く時期でした。現場を離れて何をすればよいか迷っていたところ、大久保塾長の言葉はスッと入ってきました。
企業を社会的な存在であると考える公益資本主義では、社員とその家族・お客様・取引先・地域社会など、ステークホルダー全体への貢献(公益)を重視しています。公益資本主義を学ぶ前から社員やお客様との関係性を大切にしたいと思っていた僕にとっては、非常に納得できる考えだったのです。
「経営者は社員とその家族をまず幸せにする」という原則の通り、エイジでは社員の教育と働きやすい環境整備に積極的に取り組んでいます。例えば、トータルビューティサロンとして、多くの専門技術を習得することが可能となる独自のカリキュラムを用意するだけではなく、財務諸表の読み方やマネジメントといった経営の観点が身につく学びの機会を設けています。
社外の人からは、「美容室でそんなことまで勉強するの?」と驚かれますが、そのおかげでうちの店長たちは、美容室を1店舗経営する経営者よりも実力があると思います。今すぐ独立してもそれなりの結果が出せる人材が、店や会社が好きだからうちで働き続けている。社員教育への投資を躊躇する経営者もいるかもしれませんが、社員を大切にするからこそ会社としての大きな強みを獲得することができているんです。
そういう能力の高い人材が働きやすい環境作りも重要です。エイジでは美容室では難しいとされてきた休憩時間の確保と有給休暇の取得が可能です。さらに会議時間の短縮、無駄の削減、社会保障の充実、産休後の復帰支援など、働く人が職場でもプライベートでも輝ける環境を整備しています。
6つのヘアサロンのうち、最も歴史のある山本店では日曜日を定休日にして、夕方5時までの営業にしました。子育て中のスタッフが学校の行事などに参加できるようにしたかったのです。売り上げは落ちませんでした。優秀でキャリアの長いスタッフばかりなので一定のお客様もすでについていますし、次回予約やネット予約を活用することで全体の7割が事前予約で埋まる構造になっているのも成功の理由の一つです。
今期9月からは全店で完全週休2日制を取り入れる予定です。美容業界では実に珍しいこの取り組みを実施できるのも、今までの社員教育や、環境整備、そしてお客様との間に築き上げた信頼関係のおかげです。社員とお客様とのお付き合いが長いので、社員のライフステージに合わせた制度にもかなりのご理解をいただけるのです。
社員と同様に、お客様のことを本当に大切に思っているのは言うまでもありません。創業当時からのお客様も多く、2世代、3世代と通ってくださっています。
サロンの上得意様をお招きする「新春VIPパーティ」では、エイジが今後進んでいく方向をご理解いただくためのプレゼンを設け、お客様とともに歩んでいくことを改めてお伝えしています。おかげで、「PROSOLのスタッフもお店も技術も好きだけど、会社が目指している姿が好きだし、そのビジョンに近づいていることが自分事のように嬉しい」と、エイジの成長を喜び、楽しみにしてくださっているお客様も増えました。
常に半歩先を行く経営とサービスを心がけているので、サロンにはヘアケア商品に限らず、産業医が作った「食べて健康になるチョコレート」などの商品も置いています。お客様からは「ここに来ると面白い情報がある」「ここで聞いた話が後からテレビでやっていた」と、情報の豊富さやスピード感を楽しんでいただけています。
また、2015年より新たな取り組みとして、カンボジアへの美容室進出プロジェクト「髪結」に参加しているのですが、実はこの海外進出も大久保塾長の影響です。
大久保塾長はカンボジアで10年にわたって、自身が理事長を務める公益財団法人CIESFを通じて、教育支援活動に尽力してきました。カンボジアでの体験談の話になると、「まずは自分の会社の業績を上げて、経常利益を5千万出せるようになれ」と言われたものです。その5千万のうち1千万を僕たち大久保秀夫塾に参加する企業が寄付すれば日本政府のODAに匹敵するんだぞ、と。面白いことを言うなあと思いました。それで海外にも興味を持つようになり、カンボジアに美容室を作ったんです。
(カンボジアへの美容室進出プロジェクト「髪結」に参加)
理念、社員の働きやすさ、お客様との関係性、サービスの質、未来への挑戦。
この全てに大久保塾長から学んだ公益資本主義の精神が影響しています。
大久保塾長との出会いは人生のターニングポイントでした。今後もPICCの活動の実践と成長を続けて、「新しいあたりまえ」を創り続けていきたいと思います。
(カンボジア美容学校の生徒たちと 画像提供:有限会社エイジ)
創業32年目を迎える有限会社エイジは、美容室の経営から始まりました。当時は僕も美容師としてお店に立ち、副社長の妻とアシスタントの3名でお店を回していました。現在は広島県で6店舗のヘアサロン「PROSOL」を運営。店舗内にエステサロン・ネイルサロン・ウエディングサロンなどを併設し、お客様それぞれに合った「美」を最大限に引き出すトータルビューティ事業を展開しています。WeddingStoryというコンセプトウェディング事業も行っています。特徴は、新郎新婦お二人のためだけの世界で唯一のオリジナルウェディングを実現すること。決まった料金プランは存在せず、一軒家を貸し切るゲストスタイル方式から、神社での伝統挙式、開放感あふれるアウトドアでのウェディングなど、ご希望に合わせた理想の結婚式をカスタマイズすることができます。人生において最大のイベントの一つである結婚式。最高の1日にするため、ヘアメイクはもちろん、エステ、ネイル、アイラッシュなどトータルでサポートしています。
三戸 栄
有限会社エイジ 代表取締役社長
JBCA( NPO法人日本ビューティ・コーディネータ―協会) 副理事長
※ 本記事は、2022年1月に掲載されたものであり、掲載当時の情報となります。