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株式会社nokoso

社会性を重視した経営に転換し利益率が30%改善。「清掃」を通して社会に恩返しを。

【PICC会員企業紹介】

※  本記事は、2022年1月に掲載されたものであり、掲載当時の情報となります。

 

病院・介護施設などで清掃業務を行う株式会社nokosoは、海外の技能実習生や障がい者を積極的に受け入れ、「掃育學」という独自の学問を通して、お金に縛られない豊かな生き方を教えるなど、人材育成にも注力している。
 
社会性を重視した経営に転換したことで利益率の大幅な改善を実現し、安定的な黒字経営を実現している。「自分の生き方を通じて、社会に貢献することを伝えたい」という思いは、公益資本主義経営を実践する一般社団法人公益資本主義推進協議会(PICC:Public Interest Capitalism Council)での学びから生まれたものだ。
 
今回は、株式会社nokosoの代表取締役の河野伸太郎に、企業経営にあたってのビジョンの大切さ、PICCの活動での学び、そして「王道経営実践7つの柱」について伺った。 

社会性を重視した経営に転換し利益率が30%改善。「清掃」を通して社会に恩返しを。

企業概要

株式会社nokoso 

代表取締役社長 河野伸太郎(かわの・しんたろう)

創業:1985年5月
所在地:〒651−1331 神戸市北区有野町唐櫃2928–3
事業概要:ビル清掃、ハウスクリーニング
TEL: 078-984-3737(代表番号)  0120-5050-94(フリーダイアル)
MAIL:shintaro.kawano.nokoso@gmail.com
https://info94744.wixsite.com/nokoso/home

 

理念、ビジョンの大切さ

私たちの経営理念は、nokosoという言葉の中にある3つの「わ(o)」がキーワードです。
 
1つ目は、お掃除をして自分の心が清らかになる「心の和」です。掃除をすると、まるで自分の心が洗われるような良い気持ちになりますよね。日本は学校で掃除が教育の一環として行われている世界でも数少ない国の一つです。子どもの頃から掃除が持つ不思議な力を体感できることは非常に素晴らしいと思うので、私たちも学校で子どもたちにトイレ掃除のやり方を教える「お掃除ティーチャー」という取り組みを行っています。
 
2つ目は、お掃除を通じて環境を良くする「環境の環」です。掃除をするとどうしても汚水排水が出るので、私たちの取り組みが海や川の汚染につながりかねません。その現実を直視し、ではどうしたら地球環境に貢献できるのかをきちんと考え実践していくことで、これからの社会に貢献できる存在になりたいと考えています。
 
3つ目は、みんなで協力してお掃除をしてつながる「つながりの輪」です。お掃除は皆で協力してその空間を綺麗にするチームプレイです。nokosoには、カンボジア技能実習生、インドネシア留学生、特別支援学校生、大学生インターンなど多様な人材がいるため、言葉やノンバーバル(非言語)コミュニケーションを活用したつながりを心がけています。
 
この3つの「わ」を実践し、人と人、人と自然を未来に残そうというのがnokosoの理念であり、私たちの進むべき道を示す指針です。

理念、ビジョンの大切さ

PICC、大久保会長からの学び

PICCでの学びは数え切れませんが、中でも、CRM(Cause Related Marketing:サービスの売上を、環境活動や奉仕活動に従事する機関・団体に寄付することでイメージ向上や好意度形成を図るマーケティング手法)や、BOPビジネス(Base of the(economic)Pyramid ビジネス:低所得者層を対象としたサステナブルなビジネス)などの概念を学んだことが大きな転機となりました。
 
大久保会長と出会う前、nokosoではスタッフの定着率に課題がありました。清掃の仕事現場には高齢者作業員が多く、体力の問題から長期に渡って働き続けることが困難であったためです。しかし、大久保会長から上記の概念や、「企業は世の中に潜む社会課題に自社の社業を通じて貢献し、そこから得た利益をさらに社会貢献につなげることで会社の規模を発展させるべき」との考え方を学んだことをきっかけに、2015年からカンボジア人の技能実習生を採用することになりました。
 
実習生の月収は故郷カンボジアでは約3万円ほどですが、nokosoで働くと、月15万円ほどの収入を得ることができるようになります。そのお金は実家の仕送りや、自身の夢の費用となります。また、実習生としての期間を終えて自国に戻る頃には、nokosoで身につけた技術を活用し、カンボジアの衛生面の向上に寄与できる立派な「人財」となっています。
 
技能実習生と高齢者作業員が同じ職場で働くシフト編成の取り組みを始めたことは、私たちが抱えていた高齢者作業員の人事という課題の改革にもつながりました。まず、若い実習生たちがテキパキと清掃を行うことで所要時間の短縮につながり、少ない人数で仕事を回せるようになりました。そのうえ、実習生への指導によって私たちの教育スキルも向上し、立ったり座ったりを繰り返さない効率的な清掃方法を高齢者作業員に伝えることが可能となるなど、結果として高齢者作業員が就労できる期間も伸びたのです。「nokosoだったら、あと3年お掃除できますよ」と言ってもらえた時は嬉しかったですね。
 
会社の状況が苦しくなると、いくら儲かるかという経済性だけに目がいきがちですが、PICCでは社会性を何よりも優先しています。社会性>独自性>経済性の優先順位で事業を見つめ直した結果、人事面での課題を克服でき、会社の雰囲気も向上し、黒字経営を続けることができています。今だから言えますが「PICCと大久保会長に出会っていなかったら会社は倒産していた」と自信を持って言えてしまうほど、PICCでの学びは私にとって価値あるものでした。

PICC、大久保会長からの学び

PICCの活動の実践と成長

PICCが提唱する「王道経営実践7つの柱」を中心に、nokosoの活動を考えていきたいと思います。
 
まず「社会性」ですが、これこそnokosoの強みです。清掃業務を行うことで院内感染防止を通じたコロナ禍に対する貢献と、カンボジア技能実習生を通じて途上国の人材育成支援を行っています。
 
「独自性」については、海外人材や障がい者といった多様な人材を育成している点が該当します。7年間経験してわかったことですが、平均すると海外人材は1年、障がい者は3年ほど育成に時間がかかるというのが正直な実感です。即戦力を求める経営者からすると敬遠しがちな領域かもしれませんが、時間をかけて育成した人材は裏切りません。文字通り「人財」となってくれます。経営者にとって人材確保は重要課題の一つです。せっかく理念やビジョンがあって起業したにもかかわらず、人材に課題を感じているが故に、本来やりたかった事業、理想とする自社のあるべき姿に向けた取り組みに注力できないケースも散見されます。nokosoの経験とノウハウは人材不足に悩む経営者の力になるはずですので、今後は周囲の方々に還元していくことで社会に貢献していきたいと思います。
 
「経済性」に関しては、カンボジア技能実習生を採用して以来、5期連続黒字が続いています。労働集約型のnokosoにとって、人件費のコントロールは大きな課題でした。若い技能実習生や、障がい者による人材改革が実現したおかげで、少ない人数で仕事を回すことができるようになったため、トータルの人件費を30%ほど低減することができ、大きく利益率を改善することができました。
 
「公平性」に関しては、nokosoではカンボジア技能実習生が実習終了後、母国の発展に寄与するお手伝いを微力ながら行っています。「人や国の不平等をなくそう 」というSDGs目標10に関わる部分です。
 
「継続性」としては、海外人材、障がい者雇用を始めて7年が経過し、掃育學(そういくがく)、SNS勉強会、理念ビジョン勉強会を毎月継続して開催しています。掃育學とは、nokosoでの経験をもとに体系化した、お掃除を通じて学べる学問です。お金に縛られない生き方を通じて、社会に貢献する在り方を学ぶことができます。
 
「改善性」に関して、私たちは日々改善を繰り返しているからこそ、院内感染防止の施策や多様な人材教育などを他社に教えることができる領域まで辿りついたと思っています。
 
最後に「魂の決断」についてですが、私の決断は少し変わっていると言われます。社員に企画を任せる時に、候補者が2人いたら仕事ができる人を選ぶのが普通ですよね。しかし、私は例えば「人と話すことが苦手」「自己主張が不得意」など、一般的には高評価をもらえない社員を選ぶ傾向にあります。なぜなら、この7年でそういう人の方が結果としてnokosoに残ってくれているからです。私が大切にしたいのは、真面目で陰日向のない人です。そういう人なら今すぐ仕事ができなくてもいい。3歩進んだと思ったら翌日2歩下がっている人でも良いのです。世の社長が見たら我慢ができないと思われるスピード感かもしれませんが、私はシャクトリムシ経営なので(笑)。歩みは遅くても地道に我が道を進んでいきたいと思います。
 
現在54歳(2021年当時)の私が今後の人生ですべきことは、次世代の育成です。私にはカンボジア人の8歳の娘がいるのですが、彼女とともに毎年夏休み、大久保会長が理事長を務めるCIESF(シーセフ:カンボジアをはじめとした開発途上国で教育支援をする国境なき教師団)に渡り、彼女にしかできない日本とカンボジアの架け橋を生涯かけて作っていきたいと思います。それが今の私がPICCを通じて実践したいことです。

PICCの活動の実践と成長

事業紹介

株式会社nokosoは、お掃除・教育にお困りの個人様・企業様の課題をお掃除を通じて解決することを社業としています。主なクライアントは中規模の病院や介護施設で、毎日行う日常清掃と、機械を用いて月1などで行う定期清掃を行っています。
 
病院清掃は、見た目の綺麗さはもちろん、院内感染を防ぐための環境づくりも重要です。私たちは医療施設清掃で5年以上の実績が必要な医療関連サービスマークを制度開始(1993年)から取得し、滅菌にも重点を置いた丁寧で徹底的な清掃が評価されています。 

プロフィール

河野 伸太郎

株式会社nokoso 代表取締役社長
お掃除を通じて学べる学問「掃育學」の創始者。



※  本記事は、2022年1月に掲載されたものであり、掲載当時の情報となります。

取材協力:

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