PICC 経営者のために公益資本主義を

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株式会社ジャパン・ファームプロダクツ

PICCは「心のよりどころ」。カンボジアから始めた”食の多様性”への挑戦

【PICC会員企業紹介】

※  本記事は、2024年10月に掲載されたものであり、掲載当時の情報となります。

 

 株式会社ジャパン・ファームプロダクツ。同社の代表取締役を務める阿古哲史さんは、大久保秀夫塾で公益資本主義の基礎を学んだ後、カンボジアに進出した。日本では規格外とされる農産物をカンボジアで加工し、製品化して展開するという、フードロスをはじめとした食の社会課題を解決できるビジネスを展開している。

 

 同社の大きな強みは、カンボジアの工場での生産から日本の消費者への販売までを一貫して行える体制にある。「現地の人々と共にモノづくりをするためには、お互いの文化や習慣の違いを理解し合うことが重要」と語る阿古さん。阿古さんがPICC(一般社団法人公益資本主義推進協議会、以下PICC)で学んだことは何か。

 

 カンボジアでの思い出を振り返りながら、PICCとの出会いや学び、また自身の事業の展望について話を伺った。

  
PICCは「心のよりどころ」。カンボジアから始めた”食の多様性”への挑戦

代表取締役社長 阿古 哲史さん

会社概要

​株式会社 ジャパン・ファームプロダクツ(英文社名:Japan Farm Products Co.,Ltd.)

代表取締役社長 阿古 哲史
 

​事業内容:

​ドライフルーツ・カシューナッツの輸入販売事業

日本産青果物の輸出事業

​海外農業生産及び農産加工事業

​設立/創業:2011年(平成23年)2月25日

​資本金:7200万円

​所在地:〒639-2155 奈良県葛城市竹内306

URL:https://www.japan-farmp.com/

  

公益資本主義で実現する、カンボジアと歩む新しい農業のかたち

 当社のビジョンは「この国の一次産業を、アジアにおける一大産業に」です。カンボジアで現地の人々と密にコミュニケーションを取り、生産から輸出までを自らの手で行う中で、世の中に対して「食の多様性」を共創していくことが大事だと気づきました。

 日本の技術をカンボジアの農業に取り入れて開発した製品は、無添加ドライフルーツに代表されるように、日本でも多くの人たちに受け入れられるようになっています。農業の産地づくりと共に、安全な食を開発する。そんな事業を拡大しています。

 
 これまで、東南アジアの農産加工産業では、こういった「誰もが安心して食べられる」ような製品はあまり目立ちませんでした。私たちは、「Co-Creation for Food Diversity(食の多様性の共創)」をミッションに掲げ、新しい価値を途上国と共に創出したいと考えています。

      
公益資本主義で実現する、カンボジアと歩む新しい農業のかたち

無添加ドライフルーツだけで作った「自然のミックスドライフルーツ」。
都内スーパーの青果売場や、オンラインショップを中心に販売されている。
【画像提供:ジャパン・ファームプロダクツ】

 当社の最終的なゴールは「農村開発を主軸とした国際貢献」です。最も重要なのは、「持続可能性」にどれだけ我々が貢献できるかだと考えています。いかに原材料を提供している生産者の方々に寄与できるか。やはり最大の問題は、結局のところ資本主義の中で価格競争が起きると、コストを気にするあまり農家が儲からないことです。
 

 ここがまさに問題で、欧米型消費主義の考え方ではモノカルチャーのプランテーション農業が主体とされ、連作により生産性が悪くなってしまった土地であれば、また次の安く作れる場所を見つければいい、というものがあります。しかし、PICCも掲げるように、これはもう正しくありません。
 

 公益資本主義の捉え方で言うと、途上国の生産者の方々と共に、いかにして持続可能な農業を実現させて、中長期的に産地を形成できるかを突きつめていかなければなりません。そうでなければ、結局は搾取型のモデルになってしまうからです。そのため私自身、売上が伸びたとしても、「今この状態で生産者とちゃんと向き合えているのか」と常に葛藤を感じることがあります。

      

カンボジアのパイナップル生産者。畑での収穫の様子。【画像提供:ジャパン・ファームプロダクツ

 当社は今後、食品加工品を中心としたプロダクトの幅を拡大し、さらに多くの消費者にお届けすることを目指しています。今後のマーケットとしては、アジア圏、カンボジアだけではなく、北米も視野に入れています。

 

PICCからの学びがカンボジアで実を結ぶ

 PICCとの出会いは、大久保秀夫塾がきっかけでした。2011年のPICC設立に向けて伺った大久保会長の考えに、非常に感化されました。

 
 事業を展開するにあたり、社会性を最優先にし、独自性・経済性へと続いていく。この優先順位だけは間違えてはいけない、という教えが身に染みました。当社事業の構築段階で、心から共感できる部分が多くあったことも感銘を受けた理由のひとつです。

 
 また、当社も王道経営と同じく大家族経営を指針にしていますが、企業が海外に進出する上では非常に重要です。カンボジアの多くの方々にとって、働く理由は家族のためなのです。雇用する日系企業にとっても「従業員は家族である」または「従業員の家族も家族である」と捉えたことで、独自の協力関係・信頼関係が築くことができ、事業の成長につながったのではないかと思っています。カンボジアの人々との文化・風習・考え方と共鳴したのだと考えます。
 

 大久保秀夫塾で教わった「大家族経営」は、現地で過ごすうちに「確かにその通りだ」としみじみ実感しました。

  

PICCで感じた成長と”ある言葉”|批判を超えて、信念を貫く

 PICCが掲げる「公益資本主義」は、創業時から当社が一貫して実現を目指してきたものです。

 
 PICCの教えは私にとって、常に心の拠り所となっています。特に「企業が存在する意義は社会課題を解決するためである」という言葉が、いつも私を励まし、原点に立ち返らせてくれます。創業時には資金も乏しく、自分の生活すらままならない時期がありました。さらに、カンボジアで公益性のあるビジネスを模索する中で、利益追求を重視する経営者の方々から度々批判されることもありました。

 
 しかし、どのように言われようとも、拠り所となる言葉があったおかげで、「自分のやっていることは正しいのだ」と確信することができていたのです。大久保会長は、私が苦境にあるときも、経営者として、また一人の人間として励ましてくださいます。今思い返しても、感動で胸が熱くなるほどです。

 
 大久保会長からいただいた言葉を心のコンパスとして捉えて実践し続けたことで、真のパートナーといえるステークホルダーや行政の方々など、私たちのネットワークも大きく広がりました。

  

PICCでは"自分だけじゃない"を実感

 PICCは、心の奥にある軸を形にできる場だと考えています。この事業が正しいか否か、実行すべきか否かを判断できる基準が育つのではないでしょうか。
 

 また、入会することで仲間意識も芽生えます。互いの事業が迷走しているときに励まし合えるメンバーがいると、非常に心強く感じるのです。共に困難を乗り越えてきた仲間たちとは今でも連絡を取り合っており、率直に話し合えるメンバーは皆、真摯な姿勢で事業に取り組んでいるため、「自分だけではない」という連帯感を実感します。

 
 私はPICCでの学びや、その教えを信じて継続すれば必ず成果が現れることを実感しました。実際に、直近のコロナ禍や物価の高騰、為替の急激な変動など、あらゆる障害があった中でも3期連続の増収増益を達成できています。社会課題に取り組む一企業として、PICCは本気で世の中を変えていこうとする経営者の精神的支柱となっているのではないでしょうか。

  
PICCでは"自分だけじゃない"を実感

PICC大久保秀夫会長とジャパン・ファームプロダクツ阿古哲史社長

事業紹介

 当社は、カンボジアを中心とした東南アジア各国と共に、農業と農産加工業を通じて、日本と途上国の農村地域に新しい価値を生み出し、共に発展し続けることを目指しています。

  

 現在、展開しているドライフルーツや農産加工品は、日本のスーパーマーケットやインターネットなどで販売されています。B to Bを主軸にしているため、私たちの名前が表に出ることは多くありませんが、お客さまと共に"食の多様性"に向けた私たちの事業の取り組みを拡げ続けてまいります。

  

プロフィール

阿古 哲史

株式会社ジャパン・ファームプロダクツ 代表取締役社長

  

あこ・てつし 1984年生まれ。大学を卒業後、人材会社勤務を経て、家業の農薬販売店を継ぐ。2011年に農業の海外展開を目指し、農業仲間らと株式会社ジャパン・ファームプロダクツを創業。翌2012年にはカンボジアで農業生産・流通を行う法人を設立。2016年には農産加工場を開設し、日本各地から規格外品の果物をカンボジアに輸出し、現地で加工し、第三国へ展開する6次化のグローバルフ―ドバリューチェーンモデルを展開している。

   

※  本記事は、2024年10月に掲載されたものであり、掲載当時の情報となります。

取材協力:

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