PICC 経営者のために公益資本主義を

PICC Member

会員紹介

有限会社シーズ・プランニング

情熱と使命感を胸に「チョコレートでみんなを笑顔に。カカオで世界を幸せに。」

【PICC会員企業紹介】

※  本記事は、2024年1月に掲載されたものであり、掲載当時の情報となります。

  

 大手自動車メーカーをはじめ、企業等の販売促進やプレス向けイベント、web、映像、店舗等のコンテンツ企画・制作・運営・プロデュースから、それにともなう原稿、台本、PTT、keynote等の制作まで手がける有限会社シーズ・プランニング。

  

 代表取締役の渡邉千晃さんは、本業と並行して、児童虐待の根絶に向けた活動を続けていた。PICCでの大久保会長との出会いをきっかけに、経済的な理由で学校に通えないカンボジアの子どもたちが普通に学校に通える環境を作るために、その親の世代の雇用を創出し、経済的自立を支援する仕組みを作ろうと、現地でのカカオ農園づくりを開始。同時に名古屋市西区に「チョコリコ」というBean to Barチョコレートの専門店を立ち上げ、日本初となるカンボジア産のオーガニックカカオ豆と天然パームシュガーのダイレクトトレード(農園と村からの直接輸入)も手がけている。

  

 今回は、有限会社シーズ・プランニング代表取締役の渡邉千晃さんに、PICC活動での学び、それをきっかけにスタートしたカカオ農園づくりとチョコレート事業のこと、そして「王道経営実践7つの柱」について伺った。

 

情熱と使命感を胸に「チョコレートでみんなを笑顔に。カカオで世界を幸せに。」

有限会社シーズ・プランニング 代表取締役 渡邉千晃さん【画像提供:有限会社シーズ・プランニング

理念、ビジョンの大切さ

 シーズ・プランニングは、「まずすべてのスタッフが自ら仕事を楽しむことと、すべてのお客様を100%愛することを念頭に、シーズ・プランニングに関わるすべての人と感動を共有し、すべての人の幸せを追求します」という理念を掲げています。

  

 店頭での販売促進やイベントなどの企画・制作・プロデュースを主たる業務として設立した会社で、創業当初は主にゲーム業界、音楽業界、自動車業界の仕事を行っていました。その後は大手自動車メーカーの大規模カンファレンスや大型イベント等の企画運営業務や、経営陣が行うプレゼンの原稿作成やデータ制作等を担ってきました。

  

 当社を設立した背景には、僕が10代後半から自分の使命として捉えている「児童虐待を根絶したい」という想いがあります。10代の終わり頃、たまたまテレビで子どもたちが児童虐待で亡くなったという報道に触れました。まわりの大人たちはその子どもたちが置かれている状況を知っていたにも関わらず、誰も彼らに救いの手を差し伸べることなく、子どもたちは亡くなったのです。僕自身は虐待を受けた経験はないのですが、その状況を知ったとき、ストンと自分のなかに「自分が救わなきゃいけないんだ」という使命感が生まれました。

  

 児童虐待根絶の活動に命を懸けて本気で取り組むにはサラリーマンをしていてはできないだろうと考え、20代で独立して会社を作り、40代までにビジネスモデルを構築するという構想を思い描き、45歳までに児童虐待の根絶の活動だけをして生きていけるような仕組みを作ることを目指していました。そういった背景のもと、29歳のときにスタートしたのがシーズ・プランニングです。

  

 シーズ・プランニングもそうですが、のちに始めるチョコリコの事業でも、理念やビジョン、ミッションに基づいた事業を展開していることで救われた経験があります。理念を真剣に伝え、それに共感してくださる方が現れたことで、ものごとが具体的に動き出したのです。理念はものすごく大切だということを身をもって感じています。

 

理念、ビジョンの大切さ

名古屋市西区にあるチョコリコの店舗

PICCからの学び

 大久保会長のお話を初めて伺ったのは2014年でした。先輩経営者からお誘いいただき講演会に参加したのが最初です。そのときに公益資本主義という考え方と、社会性・独自性・経済性という順序で事業を考えなければならないという話を伺い、非常に強い衝撃を受けました。

  

 当時、当社では本業の販売促進やイベント等の企画制作業務とは別に、アパレルの店舗展開(最大6店舗運営)やネイルサロンの運営、スクールビジネスの模索など、いろいろなことを試していました。バングラデシュのダッカにアパレルのメーカー商社を立ち上げたり、ロシアのアウトドア雑貨ブランドの日本と台湾での輸入販売代理店を設立したりもしていました。それもこれも、自分が動かなくても利益を生み出し続けることができるようなビジネスモデルを確立して、自分の時間を児童虐待の根絶に集中することを目的としていましたが、なかなか上手くいきませんでした。

  

 大久保会長のお話を伺って、社会性・独自性・経済性という優先順位を僕自身がわかっていなかったことにハッとしました。会長の言葉で、僕のなかでモヤモヤしていたものがスーッと消えましたね。会長の言葉が素直に入ってきて、とても大きな学びになりました。
 

PICCでの学びの実践と成長

 初めて大久保会長の講演を拝聴したとき、もう一つ着目したことがあります。それは​​​​CIESF LEADERS ACADEMY(CLA:シーセフ リーダーズ アカデミー)という、カンボジアに幼小中一貫校を建てる事業です。

  

 海外に学校を建てるということは他の団体でも行っていると思います。正直なところ僕は、ただハードをつくるだけの活動に対しては懐疑的に思っているのですが、CIESFでは、ハードではなくソフトを大事にしていること、そもそも学校の先生を育てるところから始めるということを知りました。

  

 じつは僕自身、中学生の時に一ノ瀬泰造さんの『地雷を踏んだらサヨウナラ』という本を読み、カンボジアにとても興味を持っていて、いつか行きたいと思っていたのです。そういう背景もあり、CLAの話は非常に参考になったのと同時に、僕自身の考えともリンクしていたことから、「これはぜひ参加したい!」と思い、すぐにPICCに入会しました。

  

 大久保会長のお話からは、学びをいただいたのと同時に、自分の背中を強く押していただいたように感じています。僕自身、情熱と使命感を持って取り組んできましたが、それまではどこかでまだ自信がなかったというか、自分のような人間がこんな大それた使命を掲げて本当にやっていけるのか? 周りから嘲笑されるのではないか? という不安に似た感情を抱いていました。それが大久保会長のお話を聴くことで、間違っていなかったという確信に変わり、自信が生まれて行動に移せるようになったのです。僕にとって、とても大きな転機になりました。

  

 さらにもう一つ、大久保会長のお話を聴いて、自分自身大きく変わったことがあります。それは、想いを言葉にして伝えるということです。それまでの僕は、「児童虐待を根絶したい」「カンボジアで子どもたちを学校に行かせたい」といった想いを人に言うことに、少し抵抗感を抱いていました。そういう想いは自分のなかだけで大切にして、結果だけを外に出していこうとしていたのです。自分自身の外見というか雰囲気というか、僕みたいなタイプの人間がそういう想いを口にしても「胡散臭い」と思われるだけだろうな、という気持ちもありましたし(笑)。でも、大久保会長のお話を伺って、そういった想いをどんどん口に出して言えるようになったんですね。そうすると、まさに「言霊」とでも言うのでしょうか、想いが多方面に伝播していき、共感してくださる方がたくさん出てきました。

  

 例えば、児童虐待の根絶やカンボジアでの活動を本格化していくためには、メインで取り組んでいた大手自動車メーカーさんの案件に割く時間をどうしても減らす必要がありました。なぜ仕事を減らしたいのか、背景にある想いや理念、自分のミッションをクライアントに伝えたところ思いのほか共感してくださり、ひとつひとつの案件に対して自分が関わる時間や手間を減らすことへの理解を得ることができました。それまで僕にしかできなかった仕事の標準化や関係各位への折衝など、かなりの労力は当然伴いましたが、僕の想いをしっかりと伝えることで多くの協力を得ることができました。

  

 またチョコリコの事業では、カンボジアからカカオ豆とパームシュガーをダイレクトトレードで輸入しているのですが、日本には、カンボジアからのそのような物の輸入実績がありませんでした。輸入のために必要な輸入品番コードというものすらないという状況だったんですね。

  

 ご存知の通り、日本では「前例がない」ことは大きな障壁で、それを乗り越えることは容易ではありません。カンボジアからカカオ豆とパームシュガーをダイレクトトレードで輸入したいと相談したところ、最初は税関や検疫所に鼻で笑われ門前払いされたのですが、僕はただひたすら、なぜカンボジアからカカオ豆等を輸入したい(しなければならない)のか、その背景、想い、理念、ミッション、ビジョンを伝え続けました。そうすると関係機関の役人の方のなかに共感者が出てきてくれまして、ものすごく力を貸してくださいました。その結果、輸入品番コードを新たに作成していただき、 “輸入業者でもないまったくの素人”が、カンボジアからカカオ豆とパームシュガーをダイレクトトレードで輸入するという日本で前例のないことを成し遂げることができたんです。

  

 理念の大切さはもちろん、社会性・独自性・経済性という順序で事業を進めること、理念を言葉にして伝えていくこと、そういったPICCで学んだことを実践した結果、2020年に合同会社チョコリコを設立し、2021年に店舗兼工房を立ち上げ、カンボジアから輸入したカカオ豆でチョコレートを製造販売しています。理念やビジョンやミッションは、世の中を動かすということ、言い続けることの大切さ、まずは実践してみることを大久保会長から学んだのは大きかったですね。

   

PICCでの学びの実践と成長

カンボジア プレアプット村の子どもたちやチョコリコスタッフと現地にて
 

「王道経営実践7つの柱」の実践

 PICCが提唱している「王道経営実践7つの柱」に沿ってチョコリコの事業をお話します。まず「社会性」について。僕の社会性の定義は、本業を通じた社会貢献を行うということです。寄付やボランティアではなく、本業を通じて社会課題を解決することで社会に必要とされる企業になり、その結果として適正利益をあげていくことが、社会性を考えるうえで大事だと考えています。

  

 チョコリコの事業では、チョコレートの製造販売という本業を通じて、カンボジアの子どもたちが学校に行ける環境づくりを行っています。また、自社で店舗兼工房を設けることで、店舗が立地している地域のみなさんとの繋がりが生まれています。例えば、地域のイベントに協力したり、地元の学校で非常勤講師として授業を受け持ったり出前授業に赴いたり、職業体験を受け入れたりもしています。結果的にこういう取り組みも、本業を通じた社会性のある取り組みだと感じています。

  

 また、地域の障害者就労支援施設と対等なパートナーシップを結び、チョコリコの一部商品を企画から製造まで障害者の方たちに委託したり、岐阜の視覚障害者支援団体と提携し、視覚障害のある人たちと一緒に点字新聞をアップサイクルした商品パッケージを企画してその製造を彼らに委託するなど、できることから少しずつではありますが障害のある人や生きづらさを覚える人たちの役に立てるような取り組みも行っています。そのような取り組みは日本国内のみではなく、カンボジアのプノンペンにある障害者自立支援施設(PPCIL)のドライフルーツ工場とも提携し、一部商品の製造を委託しています。

  

 「独自性」については、カンボジアからカカオ豆とパームシュガーを輸入していることが大きいです。日本で初めてカンボジアからカカオ豆を輸入したのは僕ですので、これはもう独自性の実践と言っても良いのではないでしょうか。現在は輸入だけでなく、カンボジアで自社農園を展開し、カカオ豆を育てるに至っています。また、カカオ農園でのカカオ豆の栽培→そのカカオ豆の輸入→そのカカオ豆を使用したチョコレートの製造・販売までを一気通貫ですべて自社で行っている会社は世界的にみても非常に珍しく、チョコリコの事業そのものが独自性の実践であるとも考えています。

  

 「経済性」については、利益の使い方をお客様に伝え、しっかり共有していただくことがとても大事だと考えています。チョコリコが何のために存在しているのかをwebサイトでの発信はもとより、店内に掲示するなどしてお客様にちゃんと伝えています。そうすることでチョコリコにとっての適正利益の確保がお客様にとって透明かつ納得感のあるものとして認識され、円安の進行や物価上昇に伴う商品価格の値上げをお願いした際もご理解・ご納得いただけるお客様が非常に多かったように感じています。

  

 チョコリコのお客様の中には「買い物は投票だ」という考え方の方が多くいらっしゃり、自分たちがチョコリコのチョコレートを購入することで出た利益が、カンボジアの子どもたちが普通に学校に通える仕組みづくりのために使われていることをよくご存知なんです。自分がチョコリコの美味しいチョコレートを食べて笑顔になることが、カンボジアの子どもたちの笑顔に繋がるということを、お客様は信じてくださっているんですね。その結果、僕たちの取り組みに共感してくださる方が増え、おかげさまで店舗は何とか黒字で運営できています。

  これはお客様にだけでなく、従業員に対しても同じです。利益がいくら出て、それがどう使われるのか、自分たちのお給料はいくらになるのかもすべてオープンにしています。チョコリコではこれまで採用活動をしたことが一度もありません。チョコリコのミッションに共感し、「ミッションを達成するために一緒に働きたい」と仲間になってくれた人ばかりが働いています。一緒に働いているみんなが100%同じビジョンを見つめブレない想いでミッション実現のためにキラキラ輝いてくれているのは、本当に嬉しいですしとてもありがたいことです。

  

 「公平性」については、「経済性」と重なる部分もあるのですが、社員に対して理念を伝えることはもちろん、決算についてもすべて開示していますので、自分たちがなぜそのお給料なのか、賞与なのかを理解できていると思います。これも一つの公平性だと考えています。

 

 「継続性」については、今は一生懸命美味しいチョコレートを作り、カンボジアでの取り組みを続けていくことに精一杯取り組んでいるというのが正直なところです。

 一方で、カンボジアの自社カカオ農園の運営に関わる現地での様々な業務に関しては、大卒で新卒の23歳の従業員がカンボジアに住んで、一生懸命行ってくれていますし、チョコリコの規模にしては余剰ともいえる5名のスタッフ(正社員2名、PA3名)を雇用し、次世代のチョコリコを支えてくれる人材の育成と、僕や妻がいつでもカンボジアなど海外渡航できる体制を確保しています。これは先を見据えつつ、継続性を考えた取り組みです。また、より継続性を高めるためにも、先日カカオ農園を作っている地域で2.5haの農地を自社で購入しました。

  PICCでナンバー2の存在が大切であることを学びましたが、チョコレートを製造してくれている従業員がいまして、その従業員がナンバー2と言え、チョコリコでとても大きな力になってくれています。実はチョコレート製造ってものすごく大変なのですが、一生懸命努力して素晴らしい成長を遂げてくれており、今では非常にクオリティの高い製品を作れるまでに成長してくれました。

  

「王道経営実践7つの柱」の実践

チョコリコで大人気の「グルテンフリーガトーショコラ」  

 チョコリコはカンボジアだけで終わらないと考えていて、次の展開についての構想もあります。そのあたりについても、継続性の実践として社員と共有しています。

  

 「改善性」については、美味しいチョコレートをつくるということは大前提なのですが、店頭での展開について言えば、常に新たな驚きをお客様に提供していきたいと考え、商品開発は手を抜かずに展開しています。

  ありがたいことに昨年あたりから大手百貨店さんからもお声がけいただき、催事やイベントなどにも出店するようになりました。店舗という柱を大切にしながら、カンボジアでのミッションを達成するために、柔軟性を持って臨機応変に取り組んでいきたいと考えています。

  

 「魂の決断」については、僕の信条として、嘘をつかない(約束を守る)ということが人間としてとても大切だと思っています。お客様や社員、すべてのステークホルダーの方に嘘をつかない。そういう意味で、理念をはじめ、チョコリコに関すること、その背景の想い、どのような取り組みをしているのかなど明確にしながら伝えていくことを大切にしています。口に出して伝えたからには、その約束は必ず守ります。

  さらに僕がすごく大切にしているのが情熱と使命感です。自分自身、情熱を持ち、使命だと信じて取り組んでいけば、常に楽しさとワクワク、ドキドキがあり、モチベーションが上がったり下がったりすることなく、ものごとを進めていくことができます。そういう意味では、カンボジアでの展開など、チョコリコでカカオ事業を「やる」と決めたことが僕にとっての「魂の決断」なのかもしれません。
 

カンボジアから輸入しているオーガニックカカオ豆と天然パームシュガー

カカオ事業が生まれた背景

 シーズ・プランニングから始まり、PICCと大久保会長に出会うことをきっかけにして生まれたカカオ事業。大久保会長と出会い、PICCに入会したことが、今のすべてに繋がっています。

  

 PICCの途上国支援委員会でカンボジアを訪れた際に、時間を見つけて現地の貧困層が暮らす様々な集落を訪ね歩きました。そこには経済的理由で学校に通えない子どもたちがたくさんいました。彼らが何を必要としているのか、どういう建てつけで子どもたちが学校に通うための支援をすれば良いのか、現地のみなさんのニーズを知りたいと思い、ヒアリングしていたときのことです。

  

 「自分だって子どもを学校に行かせたい。でも仕事がない、金もない。自分もこの集落で生まれ育ち、学校には行っていない。仕事もないこんな集落で、どうやって子どもを学校に行かせたらいいんだ。俺に何ができるのか教えてくれ、俺はどうしたらいいんだ」と涙を流しながら訴えられたのです。僕はそのお父さんに言いました「よし、わかった。俺が何とかしてやる!」と。それが2016年頃のことでした。

  

 彼らに必要なお金を寄付して、子どもたちを学校に行かせることはできたかもしれません。でもそれは一時的な対策で、持続可能ではない。子どもたちが普通に学校に通える環境を整えるには彼らの親が経済的に自立する必要があり、そのためには雇用が必要だと考えました。そこで、僕自身がカンボジアで何か事業を起こして雇用を創出し、子どもたちが“親が汗水垂らして稼いだお金”で普通に学校に通えるように、その親世代が経済的にも社会的にも自立できるような仕組みを作ろうと決めました。

  

 考えに考え、いろいろ調べて試した結果、たどり着いたのがカカオ豆の栽培です。そしてカンボジアでカカオ農園を自社運営しようと決めました。それが2019年の最初の頃です。

  

 2019年12月に自分の手で植えた12本のカカオの苗木を「チョコリコのマザーツリー」として育て、現在はマザーツリーから収穫したカカオの種から自分たちで新たな苗木を作っており、現時点で3,000本以上の苗木と300本程のカカオの木が育っています。2024年前半には10,000本の苗木を育て、作付面積を10ha程まで広げたいと考えています。

  

 ただカカオ農園を軌道に乗せるにはまだまだ時間がかかるので、実際に自社農園でカカオ豆が収穫できるまでの時間を使い、まずは自分たちでカカオ豆からチョコレートを作れるようになっておこうと考えました。なぜなら、カカオ農園の運営でどのようにマネタイズするかを考えたときに、自分たちでカカオ豆からチョコレートを作れるようになっておくことが、1つの確実なキャッシュポイントとなる上に、マーケティングやブランディングの観点も含め、将来的に必ず大きなアドバンテージになると考えたからです。

  

 そこで名古屋市西区に店舗兼工房「choco rico -Bean to Bar Chocolate Lab.-」を2021年7月にオープンしました。現在はカンボジアのモドルキリ州にあるカンボジア唯一のカカオ農園から直輸入したオーガニックのカカオ豆でビーントゥバーチョコレートを製造・販売しています。

  

 チョコリコのビーントゥバーチョコレートには白砂糖や添加物、植物油脂を一切使わず、甘味にはパルミラヤシの花の蜜からつくる天然のパームシュガー(蜜糖)のみを使用しています。このパームシュガーはカンボジア コンポンチャム州のマハシーク村と直接契約してつくっており、カカオ豆もパームシュガーも、農園と村からダイレクトトレードで自ら輸入を行っています。

  

 ちなみにビーントゥバーとはBean(カカオ豆)からBar(チョコレート)になるまでを自社工房で一貫製造するチョコレートの製法のことで、一般的なチョコレートとは素材も製法も全く異なるクラフトチョコレートとして近年ビーントゥバーチョコレートの人気は非常に高まっています。

  

カカオ事業が生まれた背景

パームシュガーの村(マハシーク村)の生産者の皆さんと一緒に

 チョコリコの理念は、「チョコレートでみんなを笑顔に。カカオで世界を幸せに。」です。

 チョコリコのチョコレートを食べてくれた人がその美味しさで笑顔になり、その笑顔の先に結果としてカカオで世界を幸せにしたい。そんな想いが込められています。

  

 「カカオで世界を幸せにする」という理念に共感してくださった方は、一度はチョコリコのチョコレートを購入してくださるかもしれません。でも、そのチョコレートが美味しくなければ、継続して購入してくださることはおそらくないでしょう。僕たちは、「カカオで世界を幸せにする」ことを継続して行いたい。だからこそ、食べた人が笑顔になる美味しいチョコレートをこだわってつくっています。

  

 チョコリコの店頭には「全スタッフが世界一美味しい」と自信を持ってお伝えできる商品しか並んでいません。美味しさは人それぞれの価値観であり、食べてくれたすべての人が美味しいと言ってくれる商品というのはあり得ないかもしれませんが、少なくともチョコリコのスタッフは世界一美味しいと思っているという価値基準を守ることはとても大切だと考えています。

  

 経済的な理由で学校に通えないカンボジアの子どもたちが普通に学校に通える仕組みを作るためにその親世代の経済的自立を目指して始めたチョコリコですが、今後は活動を広げていきたいと考えています。ラオスやミャンマーをはじめ、カカオを栽培できそうで、学校に行くことができない子どもたちが存在するカンボジア以外の国でも活動していきたい。だからこそ、カンボジアでの自社農園の運営を含め、チョコリコの取り組みをパッケージ化し、横展開できるようにしていきたいと計画しています。まずはカンボジアでのミッションを達成することが大前提ではありますが、既に2023年11月にはラオスでのカカオ栽培に着手し始めましたので、これから益々精力的に活動していきたいと思います。
 

2023年8月にはスタッフを連れてカンボジアにあるチョコリコ農園を訪れました

 チョコリコの店舗は今のところおかげさまで黒字運営できていますが、現実問題として、カカオ農園の運営にはかなりの費用がかかりますし、人材や設備などへの先行投資にも相当な額を費やしています。海外で設備投資資金を日本の銀行から借り入れることは難しく、正直なところ現在の一番の課題は資金調達です。それを含めて、大久保会長やPICCから得た学びを活かし、チョコリコのキャッシュポイントを増やしながら、情熱と使命感を持って「チョコレートでみんなを笑顔に。カカオで世界を幸せに。」を実現していきたいと思います。

企業概要・事業内容

有限会社シーズ・プランニング

代表取締役 渡邉 千晃(わたなべ・ちあき)

所在地 〒452-0813 名古屋市西区赤城町16-1

資本金 500万円

創業 2001年8月1日

設立 2003年10月10日
 

事業内容

大型カンファレンスやプレス向けイベント、シンポジウム、販売促進や各種イベント、キャンペーン等の企画・制作・運営・プロデュースおよび原稿、台本、PTT、keynote、映像等の各種データの企画・制作・ディレクション等を手がけている。他にもWeb、映像、店舗、空間等、各種コンテンツや宣伝広告、刊行物の企画・制作・プロデュースも行っている。

 

有限会社シーズ・プランニング http://www.seeds-p.co.jp/
 

  

関連会社

合同会社チョコリコ

所在地 〒452-0813 名古屋市西区赤城町16-1

設立 2020年7月7日

店舗・工房の開店 2021年7月

事業内容 Bean to Barチョコレートを中心とした菓子類の商品企画・製造・加工・販売・卸売、カカオ豆等の輸出入・卸売・販売

  

合同会社チョコリコ http://www.chocorico.jp/

プロフィール

渡邉 千晃

有限会社シーズ・プランニング 代表取締役

合同会社チョコリコ ファウンダー
 

愛知中小企業家同友会 会員、子育て支援NPO法人まめっこ 理事、名古屋市立山田高校 非常勤講師

 

  

 

※  本記事は、2024年1月に掲載されたものであり、掲載当時の情報となります。

取材協力:

一覧に戻る