PICC Member
【PICC全国大会2024 REPORT】
※ 本記事は、2024年10月に行われたPICC全国大会での発表に基づいて作成されたものです。
PICCは2024年で設立10年を迎えました。10年の節目を機に全国の組織を変更し、会員制度の見直しも行っています。新生PICCとして会員が団結し、同じ方向に向かって行くことができるよう、全国から会員が集い、PICCの在り方について再確認できる場として、10月16日に「PICC全国大会 in 福岡」を開催しました。
今回は「PICC全国大会 in 福岡」で登壇し、実践事例を報告してくれた会員企業を紹介します。環境保全にまつわる事業を展開する興亜商事株式会社の代表取締役・奥村雄介さんです。2015年からグローバル展開に挑戦されてきた奥村さんが、PICCで学んだことをどのように事業に活かし、またどのような展望を抱いていらっしゃるか。
業種や業態は違えども、大切にすべきポイントには多くの会社で通ずるものがあると思います。ぜひ全国大会に参加できなかった皆様にとって参考になれば幸いです。
代表取締役 奥村雄介さん【画像提供:興亜商事】
興亜商事株式会社
代表取締役 奥村 雄介
興亜商事株式会社(アスノワグループ)は、地球環境の保全と地域社会の発展を目指し、名古屋市を拠点に多角的な事業を展開する企業です。同社は、古紙や廃棄物の回収・リサイクルを通じた資源の有効活用や、地域密着型の適正な廃棄物処理に取り組み、環境保護に貢献しています。また、機密文書やデータ機器の安全な処分を通じて情報漏えいを防ぎ、農業分野では耕作放棄地を活用して安全で美味しい野菜の生産を行っています。福祉事業では障がい者が社会で共存できる環境づくりを推進し、SDGsの普及活動を通じて持続可能な社会の実現に寄与しています。
私は興亜商事株式会社の代表取締役として、現在「EARTH NOWA(アスノワ)」というビジョンを掲げ、社会課題を解決する事業にも注力しています。「地球を救うヒーローになろう。」をミッションに掲げ、豊かな地域を創り、新たな社会を育て、地球の環境を守る仕組みを作ることを目指しています。
PICCでの活動から、私は事業に社会性や独自性を取り入れて差別化をすること、海外進出、また一緒に働く人たちの大切さまで、公益資本主義の考え方を深く学んできました。
大久保会長とお会いして、その中で私が意識してチャレンジしてきたことについて、ご説明をしていきたいと思います。
弊社は1952年に私の父が愛知県名古屋市で創業し、廃棄物の回収業を基盤として行ってきました。しかし、私が28歳のときに父が倒れ、急遽、事業を引き継ぐことになります。事業を継いだ当時は、「会社を守り抜かなければ」という必死の思いで日々の業務に向き合っていました。
PICCで大久保会長から学んだことは、いずれも難しいことでしたが、どれも大事なことばかりです。とにかく諦めず、やり抜く精神を大事に挑戦し続けました。英語が喋れない自分にとって、世界に目を向けることは特に高いハードルでしたが、進出しようということ決めましたので、海外に何度も行くようにしました。
公益資本主義の学びによる私の決断と挑戦
1. 事業に「社会性」と「独自性」を取り入れる(差別化)
2. 世界に目を向け、進出(チャレンジ)する
3. 自分は微力、必要な相手を探し、提案し、組む
4. 明るく元気に、決断は早く、出来ることは全部やる
5. 自分にあった、続けられる小さな経営をする
このように歩みを進める中で、自らの在り方や存在意義を考えた結果、ビジョンとして掲げる「EARTH NOWA(アスノワ)」にたどり着いたのです。「EARTH(アス)」というのは地球や明日、また子供の未来。そして「NOWA(ノワ)」は循環の「輪」、平和の「和」、こんなことを意味しています。これはいま我々PICCが挑戦している公益資本主義そのものだなと思っています。
また、私は常日頃から、社員たちに「地球を救うヒーローになろう。」と伝えています。これも私の会社で大切にしている会社の大事なミッションです。
事業に「社会性」と「独自性」を取り入れるため、日本で挑戦しているのは、超高齢者の雇用です。現在では83歳まで社員さんを雇用することが実現できています。そして、2018年には、障害を持っている方々をサポートする会社もつくりました。耕作放棄地をお借りして障害者と一緒においしい野菜をつくる取り組みをしています。
「世界に目を向け、進出(チャレンジ)する」については、海外に出ようと決意しました。そこでカンボジアにレンタルオフィスを借りて作ったのが「GOMI RECYCLE 110」という会社です。カンボジアは急速な都市化が進む一方で、廃棄物処理のインフラは整っておらず、ゴミ問題が深刻だったからです。周囲からは「無謀だ」「殺される」「危険すぎる」といった声ばかりでしたが、とにかくやり抜こう、という気持ちで覚悟を決めました。私自身はお金がなかったので、まずJETRO(日本貿易振興機構)の支援を受け、設立費用やコンサル費用としての資金を得ました。その後に大久保会長にもお話をし、合弁会社を一緒に作らせていただいたのです。
廃棄物の事業ですので、やはり政府との関係性は必要です。ですから、JICAにプロポーザルをし続けてきました。その結果、これまで2つのプロジェクトを進めることができています。スバイリエン州で2018年から始まった廃棄物事業のプロジェクトは、ごみ山の中に工場があります。プロジェクトは、当初2年間の予定でしたが、コロナの影響もあり、つい先日終了したところです。プロジェクト終了後も引き続き州政府との協力関係も確認できましたので、今後もスバイリエン州と一緒になって廃棄物の削減に向けた取り組みを行ってまいります。
さらなる成長のため、「自分は微力、必要な相手を探し、提案し、組む」という学びを生かし、協力関係を結んだのがカンボジアにある工業団地です。ゴミを集めるだけではなく、ゴミをリサイクルする会社を工業団地の中で設立しました。
海外事業のチャレンジを始めて10年が経過し、10万ドルからスタートした資本金は、今では約100万ドルを超える規模になっています。窓のない、また机が2つしか置けないレンタルオフィスから始めたのが、今では1万平米をこえる土地を活用してチャレンジができるようになったのも、大きな変化です。スタッフも日本語が堪能なカンボジア人の通訳1名からスタートしましたが、現在ではカンボジア人スタッフおよそ50人が共に働いています。
その他にも、色々な団体と協力関係を結んで事業を行っています。有名なレストランやサッカーチーム、ショッピングモール、携帯電話会社などが挙げられます。
そして、公益資本主義を学んでいますので、「社中分配」も忘れてはいけません。会社の経営が回るようになり初めて行ったのは、カンボジアの社員へ日本への視察旅行をプレゼントすることです。また、カンボジアの子供たちへの環境教育も10年間ずっと続けています。
総括しますと、私の在り方・存在意義は、「EARTH NOWA(アスノワ)」という考え、つまり公益資本主義を実現することだと確信しています。自分ができることを、日本でも、カンボジアでも、これからもチャレンジしていきます。
※ 本記事は、2024年10月に行われたPICC全国大会での発表に基づいて作成されたものです。