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株式会社トウメイド

「デザインのニアショア」を描くトウメイド。秋田で地方創生に挑戦

【PICC会員企業紹介】

※  本記事は、2023年6月に掲載されたものであり、掲載当時の情報となります。

 

 「秋田移住で待っていたのは、デザイナーとしての絶望感だった」と語るのは、株式会社トウメイド 代表取締役の宮崎 昌裕さん。地方でやりがいある仕事や好きな仕事に就く難題に立ち向かい、自ら居場所を作った経歴を持つ。

 世界的な賞を受賞し、デザイン性の高さに定評のある同社。秋田を本拠地に、企業や商品のブランディングを手がけるデザイン会社として、事業拡大の真っ只中にある。会社が勢いにのる中、経営者として感じた焦りや違和感とは。

PICC(一般社団法人公益資本主義推進協議会、以下PICC)との出会いで払拭されたワケや、「王道経営実践7つの柱」に通じる具体的な取り組みを伺った。
 
 洗練された印象を受ける同社のパッケージデザイン。一方で、これまでの苦悩や地方への思いをありのままに語ってくれた宮崎さん。ステークホルダーや地方が豊かになるカタチを真剣に模索する姿は、PICCの提唱する言葉と共鳴する。

 

「デザインのニアショア」を描くトウメイド。秋田で地方創生に挑戦

代表取締役 宮崎 昌裕さん【画像提供:トウメイド】

企業概要

株式会社トウメイド

代表取締役 宮崎 昌裕(みやざき・まさひろ)
所在地 〒013-0071 秋田県横手市八幡字石町235番地4
資本金   100万円
設立 2021年10月1日(社名変更:株式会社トウメイド)

   2018年4月4日(法人化:株式会社宮崎デザイン事務所)

   2016年11月1日(個人開業:宮崎デザイン事務所)

  

事業内容
企業や商品のブランディングに特化したデザイン会社。企業や商品、サービスのコンセプトを設計し、ロゴやWEBサイト、パッケージなど様々なツールに展開。
 
株式会社トウメイド https://toume.id

  

トウメイドの理念・ビジョン

 当社の理念は、「あるべき物を、あるべき場所へ。そして、世界を彩りゆたかに。」です。
 
 世の中には品質やサービスが良くても、売れずに伸び悩む会社は多い。私たちはブランディングやデザインの力で活躍できる場所へお連れし、今ある価値の最大化や新たな価値の創造を支援する存在になりたいと考えています。
 
 理念のルーツは、私の実体験にあります。地元福島でデザイナーとして広告会社に勤務。上場企業の案件に携わる充実した日々でしたが、2012年に秋田へ移住します。きっかけは東日本大震災でした。当時、妻は妊娠7ヶ月。家族が安心して暮らせる環境を考え、決断しました。
 
 「華々しい仕事はない」と予想していましたが、移住先で待っていたのはデザイナーとしての絶望感。新生活の拠点、横手市は秋田県第2位の都市ですが、現在人口は9万人を下回ります。やりたい仕事は見つからず、地方のタウン情報誌の編集室で紙面のデザインやレイアウトの仕事に就きました。
 
 それでも「デザインの仕事が好き」「お客様に喜ばれるとうれしい」という思いにこだわり、自ら居場所を開拓して今に至ります。商品やサービスに限らず、組織やそこで働く人たちが輝く場所はきっとある。その思いも込めて理念を掲げました。
 

PICCからの学び

 PICCへは、東京進出の節目に入会しました。当社は今、東北中心の取引から全国展開へ事業を拡大しています。国際的パッケージデザイン賞「Pentawards2019」で部門最優秀賞の金賞を獲得し、ロンドンでの授賞式に参加。デザイン性の高さが認められ、後述する当社ならではのブランディング手法も確立しつつあります。
 
 一方で経営者としての私は、焦りや違和感を抱えていました。「売上を上げなければ」という焦りと、数字作りを優先する自分への違和感です。
 
 そんな胸中で参加したPICCのセミナーで、大久保会長から「事業は社会性、独自性、経済性の順番で考えるべき」という言葉を受けます。「デザインの力で世の中に良い変化をもたらしたい」という社会への思いを優先していいんだと勇気づけられました。
 
 マインドチェンジのきっかけをくださった大久保会長や同会のみなさんに感謝しています。入会して間もないですが、今後も経営者として多くを学ばせていただきたいです。

 

PICCでの学びの実践と成長

 「王道経営実践7つの柱」の「社会性」「独自性」「公平性」に通じる話です。
 
 まずは、社会性について。当社のお客様は零細企業や売上10億円以下の中小企業が大半です。事業継承後も営業で苦労し、利益はわずかと嘆くお客様が多い。地方で仕事をしていると、日本の社会問題が目前です。
 
 秋田県湯沢市の奥地で稲庭うどんを作る「いなにわうどん しゅんぞう堂」さんの二代目からも同様のご相談が。企業や商品ブランディングの分野で、食品関連の実績が豊富な当社は、同社の稲庭うどんをリブランディングしました。
 
 二代目による新たな一歩、そしてその一歩の先(IPPO AND = IPPO’N)を求め続け、永遠に進み続けること。一本気な二代目の性格と美しいまっすぐなうどんそのものを表したのが「いっぽん(IPPO'N)」です。
  

PICCでの学びの実践と成長

国際的パッケージデザイン賞「Pentawards2019」で部門最優秀賞の金賞を獲得【画像提供:トウメイド】

完成を目にした二代目の「宮崎さん、これなら俺、めっちゃ営業行けます!」という言葉がうれしかったですね。商品のコンセプトを明確にし、パッケージデザインを一新することで、営業活動が盛んに。売上は前年比の2倍、利益も大幅に改善しました。
 
 次に「独自性」。当社のそれはブランディング手法にあります。「何を売ろう」や「どうやって売ろう」を先行しがちですが、「なぜ売るのか」の言語化にとことん時間をかけます。こだわり卵を販売する「東海林養鶏場」さんを支援した際も、理念や商品コンセプトを徹底的に深掘りしました。
 
 質問をくり返し、その企業の「らしさ」を追い求め、社長の言葉をほぐして伝わる言葉に変換する。企業の根幹に触れるまで、ときに2時間の対話を10回重ねることも。デザインへ展開するときの「一貫性」にこだわり、ここまで時間をかけるデザイン会社は他にないと思えるまで、根気よく向き合います。
 
 最後の「公平性」ですが、支えてくれているチームメンバーへ感謝を伝えたい。正直に言うと、私はマネジメントが得意ではありませんでした。デザインが好きなプレイヤータイプ。「会社は経営者の器以上に大きくならない」と言いますが、痛感します。
 
 メンバーを信頼して任せる。全てに関わらなくても仕事は進む。そう思えるようになり、事業拡大へ舵を切りました。デザイナーとして私の他に2人が活躍中ですが、頼もしいんですよ。
 
 嫌な顔をせず仕事を引き受けてくれ、デザイン能力が高いスタッフ。ブランディングに必要な情報分析力に長けているスタッフ。彼女たちのおかげで、経営者としてあるべき姿を目指せています。

株式会社トウメイドで宮崎代表を支えるデザイナーの永沢さん(左)と髙橋さん(右)【画像提供:トウメイド】

事業紹介

 当社は、秋田を本拠地に「企業ブランディング」と「商品ブランディング」を手がけるデザイン会社です。福島県福島市や東京都渋谷区にも拠点を設けています。チームメンバーは6名。デザイナーは私を含め秋田に3名、東京進出を機に東京が拠点のスタッフも迎えました。

 
 「ブランディング」には、理念の再構築や創造が欠かせません。企業や商品のあり方を一緒に考えるため、トップや従業員のみなさんと対話を重ねます。
 
 明示された理念をロゴやWEBサイト、パッケージなど、ステークホルダーがブランドを体験できるツールに展開。特に食品関連の実績が豊富です。先述した稲庭うどんの「いっぽん(IPPO'N)」を始め、秋田から全国へ販売する「合同会社ダイセン創農」さんの看板商品、トマトジュース「毎日がとまと曜日」も当社の代表的な実績です。
 

事業紹介

2020年にデザイン書『タイトル文字のデザイン』(パイインターナショナル)へ掲載される。
【画像提供:トウメイド】

 
 
 地域ならではのエピソードを別の文脈で語り、新たな商品を生み出すことにも挑戦しています。その一例が秋田県角館のご当地調味料、「御狩場焼みそ」です。その地で古くから醸造業を営む「安藤醸造」さんへ商品開発を提案。
 
 アウトドアブームの今、「元祖アウトドア調味料」としてキャンパーに好まれる商品になるよう、パッケージやWEBサイトのデザインを担いました。
 

アウトドア調味料の「SOUS」。和のカラーリングとアウトドアのワイルドさを表現【画像提供:トウメイド】



 当社の景気が良くなれば、周りの企業や地域も活性化します。大企業と仕事ができるようになれば、地方でデザインを仕事にしたい人の雇用も生み出せる。「デザインのニアショア(首都圏から離れた企業へ外注)」ができないかと次のステージを描いています。
 

プロフィール

株式会社トウメイド 

代表取締役 宮崎 昌裕(みやざき・まさひろ)
 
1983年生まれ、福島県出身。
地元福島で小学校教員を務めた後、広告会社へ就職。秋田へ移住後、2016年に個人事業主として「宮崎デザイン事務所」を開業。2021年に「株式会社トウメイド」へ社名変更し、法人化を果たす。東北の企業や事業者のブランディングを中心に支援し、2023年には東京へ進出。渋谷にも拠点を設け、全国展開を加速する。
 

<受賞歴>

国際パッケージデザイン賞 ペントアワード2019 金賞
 日本パッケージデザイン大賞 2019 4点入選
 国際パッケージデザイン賞 ペントアワード2022 ノミネート
 STUDIO DESIGN AWARD 2022 最終ノミネート

 

※  本記事は、2023年6月に掲載されたものであり、掲載当時の情報となります。

取材協力:

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