PICC 経営者のために公益資本主義を

PICC Member

会員紹介

サムライヌードル株式会社

社員とともに続ける社会貢献。「ワンオーダーワンギフト」でグローバルアジアをめざす

【PICC会員企業紹介】

※  本記事は、2024年6月に掲載されたものであり、掲載当時の情報となります。

  

 「自分の道は夢から始まる」を胸にサムライヌードル株式会社を経営する、代表取締役&CEOの奥村宗弘さん。2011年、北海道味噌ラーメンを主軸として事業を拡大する中でPICCの学びと出会い、さらにカンボジアの子どもたちの現状を目の当たりにしたことがきっかけとなり、売上第一主義から社会貢献第一主義へとパラダイムシフトした。

  

 社員に理念ビジョンの浸透を図り、コロナ禍でも決して諦めることがなかったカンボジアへの寄付活動は、今や奥村さん率いるサムライヌードルの夢に。

  

 今回、「食を通じておもてなし精神、社会貢献活動、学びを大切にし、グローバルアジアとともに発展します」という100年ビジョンに込める思いや、PICCの活動での学び、さらに「王道経営実践7つの柱」について詳しく話を伺った。

  

社員とともに続ける社会貢献。「ワンオーダーワンギフト」でグローバルアジアをめざす

代表取締役&CEO 奥村宗弘さん【画像提供:サムライヌードル株式会社】

理念、ビジョンの大切さ

理念、ビジョンの大切さ

看板商品である「炙り味噌らーめん®」は商標登録も【画像提供:サムライヌードル株式会社】

 当社は、「人生の道は自分の夢から始まる」ということを企業理念とし、自分の夢を叶えるために求めているものを明確に具体的に肯定的に決め、日々実行することを目標としています。

  

 「夢」ということで言えば、15年前、ラーメン業界で日本一になりたい、戦って勝ちたいという思いで「サムライヌードル」という社名で創業しました。ですが、2011年にPICC会長である大久保秀夫氏が主宰する経営塾の一期生として、社会性、独自性、経済性の重要性を学び、それらを順に追求していくことが重要だと気付かされました。

  

 そこでまず掲げたのは、次世代にも継承していける100年ビジョン、「食を通じておもてなし精神、社会貢献活動、学びを大切にし、グローバルアジアとともに発展します」。

 お客様への感謝の気持ちを大切にする社員教育を行うと同時に、ラーメン1杯につき2円をカンボジアに寄付する活動を立ち上げました。これまでの13年間で集まった累計約390万円の寄付を基に、カンボジアの孤児院や障害者施設でラーメンの炊き出しを行うNGO「Pay it Forward」を運営し、さらには完全無償の日本語学校を立ち上げ、現地の子どもたちの支援を続けています。
 

NGO「Pay it Forward」では孤児院や障害者施設でラーメンの炊き出しを行っている
【画像提供:サムライヌードル株式会社】

PICCからの学び

 大久保会長から直接学びを得ていた2011年当時は、会社が赤字決算となり、その後の方向性を模索していた時期でした。売上や事業拡大をなによりも重視していた私にとって、社会性、独自性のある経営を行った上で経済性を求めるべきだ、という大久保会長の教えはまったく新しい発想でした。

  

 ちょうどその頃、アジアで急成長するカンボジアでビジネスチャンスを掴もうと現地を視察したんです。その際、好奇心で訪れたスモーキーマウンテンで子どもたちが素足で真っ黒いヘドロ道の中で生活している様子を目の当たりにし、私の中で人生のパラダイムシフトが起こりました。カンボジアへの事業進出の前にやるべきことがあるのではないかと。とにかくこの子どもたちにラーメンを食べさせたい一心で日本に戻りました。

 帰国後すぐに、社員に寄付活動を開始することを伝えると、それまでの経営方針とはかけ離れたビジョンだったこともあり、社員とアルバイト併せて16人が去っていきました。ただ逆に、会社にとっての社会貢献の重要性を説いたことで、そこに共感するスタッフが徐々に集まり始めたのも事実です。社会的意義を社員自らが意識したことで人間性が養われ、さらに、それぞれが思い描く夢や目標の実現に向け、お互いに支え合う雰囲気もできました。
 

PICCからの学び

カンボジアにあるまなぶ日本語学校では子どもたちが真剣な眼差しで学ぶ【画像提供:サムライヌードル株式会社】

 社員には、常に「有難う」「ご馳走さま」の意味も伝えています。そもそも食べ物が目の前に有ることがいかに難しいことなのか、また、その食べ物を口にするまでにどれほどの人が関わり馳走したのか。見えない部分も意識し感謝の気持ちを持つことで、私と社員スタッフとの関係性もより強固なものになったと感じています。

 おかげさまで、それ以降は売上も年々120%前後の伸びで推移。コロナ禍の影響で店舗数、売上ともに減少しましたが、サムライヌードルとしての経営基盤は確実に整ったと考えています。

  

PICCでの学びの実践と成長

 「王道経営実践7つの柱」について当社で実践していることについてご説明いたします。

 

 まず「社会性」においては、当社のCRM社会貢献として、ラーメン一杯につき2円をカンボジアの子どもたちへの支援活動に使っています。さらに、発券機に寄付ボタンを設け、お客様自ら寄付できる仕組みを日本で初めて開発しました。一つの商品から一つの寄付をという意味の「ワンオーダーワンギフト」は、金額の大小ではなく無理のない範囲で息長く続けることに意味があります。

 社員の名刺1枚につき5円を寄付する取り組みも行っており、受け取った方に当社の社会活動へ関心を持っていただくきっかけにも繋がっています。

PICCでの学びの実践と成長

【画像提供:サムライヌードル株式会社】

発券機からは20円の「カンボジア寄付」ができるようになっている【画像提供:サムライヌードル株式会社】

 次に「独自性」。これに関しては、7年前よりグルテンフリーのラーメン、ビーガンやベジタリアン向けのラーメンを提供しています。

 実は、私が突然小麦アレルギーになったのを機に開発したのですが、自らがラーメンを食べられなくなり初めて、同じ状況のお客様の目線に立つことができました。実際に、海外の方を含め、お客様には大変喜んでいただいています。

  

 「経済性」に関しては、やはりコロナ禍の影響がまだ尾を引いており、それまであった8店舗が3店舗に減少、最大3億円あった売上も半分ほどに落ち込んでいます。ただ、最も低かった頃に比べると、現在は徐々に回復しつつあります。もちろん、寄付はコロナ禍でも継続。当社の理念としてそこは曲げないつもりです。

 ラーメン店は、90分に1軒潰れて90分に1軒オープンすると言われている中で、当社がこれまで続けてこられたのは、私自ら現場に入ることで社員スタッフの様子を把握し、売上に関しても包み隠さず彼らと共有してきたからだと自負しています。組織を率いるものとして、社員スタッフと共に会社を運営していく意識が重要だと考えています。
 

奥村社長自ら現場に立ちラーメンを作る【画像提供:サムライヌードル株式会社】  

 「公平性」ということで言えば、大久保会長の教えでもある「足るを知る」の考えに大きく影響を受けました。共に働く社員スタッフに感謝し、その働きに対し正当な対価を支払うことは重要なことです。

  

 次の「継続性」に関しては、第一にカンボジアへの寄付活動。それから、先程の100年ビジョンや企業理念に加え、経営理念、存在意義、事業姿勢、行動原則を社員スタッフの面接時に必ず伝え、理解を得るよう心がけています。これは会社継続の要であると考えています。

  

 「改善性」という意味では、補助金を利用した事業の多角化の一つとして、新たにソフトクリーム事業を構築する予定です。3坪という小スペースでわずかなスタッフにより運営できるという利点があり、なおかつ地産地消の社会性を打ち出すために、47都道府県の農作物を材料にした製造を考えています。「食」へのチャレンジを行い、当社の100年ビジョンに謳っている「食を通じて」、世界の人口の半分を占めるアジアの成長にも寄与したいと思っています。

  

 「魂の決断」ですが、社会性第一での経営に転換したということに尽きます。大久保会長から学び、私の経営理念の軸となっている考えです。長年継続しているカンボジアへの社会貢献も、グルテンフリーのラーメン開発も、今後始まるソフトクリーム事業も、全てにおいてお客様や社員スタッフ、さらに社会のためにという「三方よし」が体現できているとも実感しています。

 

大久保会長とともに【画像提供:サムライヌードル株式会社】

事業概要

 サムライヌードル株式会社は現在、渋谷、札幌、松本に「麺匠真武咲弥」の名でラーメン店を展開し、炙り味噌らーめん®をはじめグルテンフリーラーメンなどアレルギーフリーのラーメンを提供、全国各地で開催されるラーメンイベントにも多数参加しています。

  

 2011年より開始した社会貢献では、カンボジアの子どもたちへの支援活動としてNGO「Pay it Forward」を設立、さらに日本語学校の運営も行っています。その活動源となっているのは、ラーメン一杯につき2円の寄付と、寄付ボタンつきの発券機です。これまでに約390万円の寄付が集まり、カンボジアでの社会貢献活動を行ってまいりました。

  

 この基盤となっているのが、当社の100年ビジョンである、「食を通じておもてなし精神、社会貢献活動、学びを大切にし、グローバルアジアとともに発展します」という考えです。そこで大切なのは、社長である私だけではなく、社員スタッフの一人ひとりがこのビジョンや企業理念を深く理解し共有すること。当社にできる社会貢献を考え、さらに当社にしかできない独自性を加えることが、サムライヌードルのさらなる進化に繋がっていくと確信しています。

  

 現在、当社のスタッフにはベトナム人が増えてきていることもあり、今後はベトナムでの社会貢献活動も検討しています。カンボジアでの活動もさらに充実させながら、グローバルアジアの発展に貢献していければと考えています。

事業概要

真武咲弥 渋谷店【画像提供:サムライヌードル株式会社】

企業概要

サムライヌードル株式会社
株式会社サムライヴィジョン

代表取締役&CEO 奥村宗弘(TOKI)


事業内容:

炙り味噌らーめん®・麺匠真武咲弥直営店の運営・飲食店プロデュース事業・カンボジア孤児院支援・券売機販売事業

  

所在地:〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂2丁目10番3号

資本金:1,000万円

創業年月日:2004年9月

設立年月日:2009年1月8日

TEL:03-6416-3778

https://samurai-noodle.jp/

プロフィール

奥村宗弘/おくむらときひろ

「自分の道は夢から始まる」を掲げ、サムライヌードルを東京で創業。地元北海道留萌から2005年に同地で麺匠咲弥開業、2007年札幌琴似に進出。東京でのリベンジを胸に2009年再び上京し、サムライヌードル株式会社を設立する。2010年4月、炙り味噌らーめん®を開発し渋谷道玄坂にオープンし、その後店舗数を増やす。2011年よりスタートしたカンボジアでの社会貢献活動はコロナ禍でも継続し、今に至る。 

  

  
※  本記事は、2024年6月に掲載されたものであり、掲載当時の情報となります。

取材協力:

一覧に戻る