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株式会社IDENTITY

社会貢献に特化し、不可能だと言われる認知症の改善をしたい

【PICC会員企業紹介】

※  本記事は、2023年3月に掲載されたものであり、掲載当時の情報となります。

 

 家事代行、訪問介護、認知機能改善のサービスを提供する株式会社IDENTITY。創業当初は家事代行サービスでスタートし、その後「生涯わが家」のコンセプトを自社サービスの根幹とし、日本で初めてとなる自費100%訪問介護サービス、認知症改善のサービスを開始した。特に認知症改善サービス「ユーモラス」は、従来の認知症に対する薬物治療法とは一線を画す、これまでにない生活習慣の改善に特化した新しいサービスだ。

  

 社会問題の1つである認知症に関する事業に取り組む決意をしたのは、公益資本主義経営を実践する一般社団法人公益資本主義推進協議会(PICC)での学びが大きく影響している。

 

今回は、株式会社IDENTITYの代表取締役の野地数正さんに、企業経営におけるビジョンの大切さ、PICCの活動での学び、そして「王道経営実践7つの柱」について伺った。
 

社会貢献に特化し、不可能だと言われる認知症の改善をしたい

企業概要

株式会社IDENTITY

代表取締役 野地数正(のぢ・かずまさ)

所在地 〒963-0117 福島県郡山市安積荒井1-30

資本金 8,500,000円

設立 平成22年9月17日

事業内容  家事代行サービス「ブルーブルー」 訪問介護事業「フリケア」 認知機能改善サービス「ユーモラス」 ※令和5年ローンチ予定

家事代行のBlueBlue
生涯在宅コンシェルジュ フリケア

認知機能改善サービス「ユーモラス」

 

理念・ビジョンの大切さ

 株式会社IDENTITYは、『社員一人一人が「己(自分の役割)とは何か」を探究するために存在する』という経営理念を掲げています。私にとって人生の大きなテーマは、人は何のために生まれて、どうあるべきかを見つけることです。「なんのために、起きている時間の半分も仕事に費やしているのか?」を考えたとき、仕事を通じて人生の意味を探究するため、というのが私の答えでした。そのため「自分とは何なのか」というテーマを経営理念にも、社名にも反映させました(IDENTITYは「主体性、自分らしさ」という意味を持つ)。

  

 仕事は対価をもらうための労働であるだけでなく、自分の存在を知る最高の機会だと思っています。社員には仕事を通じて自分のことを探究し、自分らしさと出会っていく。そうして役割を見つけていってほしいと思っています。そのために行なっていることとして、抽象度の高い経営理念をより社員に浸透させるために、クレドを共有しています。
 

PICCからの学び

 PICCでの一番の学びは、社会性を最重要事項として会社を伸ばすことが可能だと知れたことです。私は日本が好きで日本を元気にしたいと思っていたため、社会に対して何かできないかずっと考えていました。そんなとき、大久保会長に出会い「公益資本主義」という言葉を聞き、その姿勢に共感すると同時に、上場企業で公益に重きを置いた経営が可能なことに驚きました。

  

 上場企業で体系化された公益資本主義を学んだことで、会社は社会の公器であると改めて実感しました。経営面では「王道経営実践7つの柱」に含まれる社会性、独自性、経済性という軸を持てたことで、望ましい在り方や、今後見えてくる可能性がより明確になりました。その結果、公益資本主義というフレームにあてはめて会社を伸ばしていくのが方向として間違っていないと感じ、理想の会社経営ができています。貴重な学びをたくさん与えてくださったことに心から感謝しています。

PICCでの学びの実践と成長

 PICCが提唱する「王道経営実践7つの柱」を中心に、株式会社IDENTITYが提供する認知症改善サービス「ユーモラス」の活動を考えていきたいと思います。

 まず社会性について、当社では「世の中にとってどうなのか」を一番大切な基準として事業を展開しています。もしPICCで学んでいなければ、深い問題を抱える「認知症」にアプローチする事業を展開することはなかったと思います。何故なら「認知症」は多くの医療関係者の多くが「改善しない」と思い込んでいるからです。弊社はここに真っ向から挑戦していきたいと思います。そして最終的には、社会性を追求することが正しかったということを、ステークホルダーのみなさん、お客様、そしてなにより社員と分かち合いたいです。

  

 次に独自性について、認知症を「改善する」という前例のない取り組みを行なっています。現在認知症を治す薬はありません。治らないのに「認知症になると病院に行って薬をもらう」というスキームを誰も疑わない。そこに私は着目し、非薬物による治療を行うことにしました。大久保会長の「『誰もやっていないからやらない』ではなく『誰もやっていないからこそやろうじゃないか』」というお言葉があったからこそ、認知症改善のサービス提供に至りました。

  

 続いて経済性について、認知症改善サービス「ユーモラス」は市場が拡大している分野に対して今までにないアプローチをしているため、需要が見込めると考えています。2012年時点で65歳以上の7人に1人、2025年には5人に1人にまで増えると言われている認知症患者数。この急速に広がる社会問題を、独自性をもって解決することが経済性に繋がると考えました。そこで、これまで既存サービスを提供してきた仙台、福島だけでなく、東京や大阪でもサービスを提供し、より売り上げを増やせるようにしていきたいと考えています。

 

 公平性については、年間120日の有給休暇のうち、8日分を1時間単位で取得できる制度を作りました。当社は女性が働きやすい会社を目指していたこともあってか、社員の大半が女性です。お子様の行事や突発的なトラブルに対応できるよう、1時間単位で有給休暇を取得できるようにしました。
 またパートナー企業との関係について、パートナー企業にとってシナジー効果のありそうな企業を紹介するなど、相互利益となるような働きかけを意識しています。

 

継続性について、 未来への投資を行なっていること、また中長期的な目標として、ヘルステック(健康問題を解決できるテクノロジー)による異業種との認知症改善策(AI導入による改善)を試みることを考えています。

  

 続いて改善性について、現在の常識ではできないと言われている認知症の改善に取り組んでいます。認知症改善サービスは、全国85社参加の中から2022年度仙台ヘルステックコンソーシアムで最終選考に残りました。先手を打っているからこそ難しい部分もありますが、お客様の意見を取り入れながら認知症の改善に取り組んでいきます。

 

 魂の決断について、サービスに薬を用いるか否かの決断が魂の決断だったと思います。サービス開始前、大手企業様から提携の打診がありました。そのとき薬物治療を用いたサービスにするか、薬に頼らないサービスにするかの決断を迫られました。とても迷いましたが、非薬物療法の可能性や、社会貢献の大きさを考え、どちらの方が次世代に胸を張っていられるかを考えた結果、非薬物に特化したサービスにすることを決めました。今後も決断をすべき時が来たら、「自社にとっても、世の中にとってもどうなのか」を考えていきたいです。

事業紹介

 株式会社IDENTITYは、お客様のお宅を訪問し、家事代行、訪問介護、認知症改善サービスを提供しています。会社を立ち上げた当初は家事代行サービスのみを提供していましたが、サービスを利用されるお客様の高齢化に伴い、介護サービスを求める声が増えました。それをきっかけに介護サービスの提供も開始し、2023年1月からは新たに認知症改善サービス「ユーモラス」も開始しました。

   

 認知症改善サービス「ユーモラス」について、「生涯わが家で暮らすこと」の大切さを実感し、その意思を尊重し、制度に縛られないという想いからあえて介護保険を使わないサービスにしました。介護保険を使ってしまうと、要介護度に応じて受けられるサービスが決まってしまうからです。貯蓄やご家族のサポートの有無にかかわらず、決まったサービスしか受けられないのは認知症の方にとって嬉しくない状況。その状況から脱却し、お客様一人ひとりのできることに着目し、手厚いサポートをすることで、生涯自宅で過ごすお手伝いをします。

  

 2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると言われている時代。だからこそ、一人ひとりに合ったサービスを提供し、今まで不可能だと言われていた認知症の改善に取り組んでいきます。

プロフィール

野地 数正

株式会社IDENTITY 代表取締役

 

昭和51年、福島県生まれ。自動車販売店の3代目跡継ぎとして帝王学を自然と学ぶにも、平成22年退社し株式会社IDENTITYを設立、家事代行サービスを運営。後に自費の介護サービスも開始し、令和5年2月からは認知症改善サービスの提供を予定している。

 

※  本記事は、2023年3月に掲載されたものであり、掲載当時の情報となります。

取材協力:

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